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※同意じゃないのに人の体弄っちゃう男子がいるので注意。


お隣に住む石間さんと不本意ながらキスをしてから三日が経った。

「いつ、まで逃げんの橋本!」

俺は大学で友人の橋本を追いかけていた。
理由は何故か橋本が俺から逃げるから。なんというか適当な理由だなと思ったが、友人にこれだけあからさまに逃げられると気になるじゃないか。理由が。

「警戒心のない奴が追いかけるのやめるまで逃げるけど」
「はあ!?つか涼しい顔して速度あげんなくそ!」

人が必死に走って追いつけないというのに、橋本は更に速度を上げて走り始めた。
好きで運動サークルに入っている橋本と違って、俺はサークルに入ってもなければ体育も出席率だけ取ればいい程度のものなので運動はしていない。
速度を上げた橋本に当然俺が敵うはずもなく限界が来たころには橋本は一切見えなかった。

「ちく、しょ、はえーし、なんで逃げるかわかんねーし、あ、もー……」

息を整えるように吸ったり吐いたりしつつ、その場に座り込む。
喉がカラカラとして熱い。まるで高校のときの持久走をしたときのような感覚だ。
げほ、と一回咳き込んでまたゆっくり息を吸ったり吐いたりする。
走ったせいでだいぶ疲れてしまったし汗もかいたので、講義をサボって家に帰ることにした。

違う話になってしまうが、以前、というか三日前におばさんにもらった耳栓は大活躍している。
おばさんは最近必要なくなって良かったわーなんて昨日俺に言って来たが、正直俺にはなくてはならないものになってしまった。
毎晩石間さんが壁越しに話しかけてくるのだ。寝た?とか明日暇?とか、あとは最近抜いた?とか。
前の二つまでなら納得できなくもない。ただ最近抜いた?は答えづらい上に若干の下心を感じなくもない。
だから何にも受け答えしないように耳栓をする。昨日から耳栓のおかげで石間さんを意識せずに寝れていた。

「……どうしよう必修の講義あるの忘れてた」
「人を見るなり顔色変えてそういうこと言うのってよろしくないと思うよ、俺」

鍵を探しながら階段を上って廊下に出ると、なぜか知らないが石間さんが座っていた。俺の部屋の前に。
嫌な予感しか無かったので適当に理由をつけて大学に戻ろうとすると腕を掴まれた。

「離して下さい、俺、マジ大学、」
「たまには俺と遊んでよ、橋本なんていう奴おいといて」

石間さんの口から橋本、という名前が出てくるとは思わなかったので動作が無意識に止まった。
それをいいことのように取った石間さんは無遠慮に抱き着いてきた。首に息が当たって少しくすぐったい。
ていうかここ外。外です石間さん。て、今の問題はそこじゃねーや。いやそこか。

「ちょ、一回離し……」
「俺と遊んでくれるんなら考えなくもないかなー」
「遊びます、遊びますから、マジ離して下さい。ここ外なんで。公共の廊下なんで」

言ったね?と言いながら石間さんは離れた。なんだか簡単に言ってはいけないようなことを言ったような気がするが、気にしたら多分負けなんだと思う。
俺がそんなことを思っている間に石間さんは俺の手から鍵を取り、俺の部屋の前まで来ていた。
いや遊ぶって俺の部屋かよ。そう思ったが口には出さずされるがまま自分の部屋なのに招かれるように部屋に入った。





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