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『会、ちょ…?』
普段の面影は余りなく、オールバックにされている黒髪が酷く似合う。
覗いた先に居たのは会長と知らない女の人。
私に気づかず楽しそうに談笑する会長達にずきりと胸が痛む。
時折女の人が会長に触れると息が苦しくなった。
がたり。小さな音を発ててしまい、会長と目が合う。
肩が小さく跳ね、扉の真横にある壁に背中を預けた。
出て行く女の人からは死角になっていたのか、嬉々と去っていく背中を呆然と見つめる。
ほっと息を吐くと腕を引かれ、部屋の中へ引き込まれた。
「メイドか。」
『……会長、』
「零、」
暫く目線が合う。
段々と近づいてくる様な気がする顔を無視して口を開いた。
『会長、ほすとくらぶって何?』
がくりと肩を落とす会長。
そして何故か持ち上げられ、ソファーより少し高いテーブルに座らされた。
向かい合ってソファーに座る会長と再び目が合う。
「知らないで来たのか?」
『月が面白そうだから、って。』
「で、お前はその格好で接客してたのか。」
『媛乃に強要されて。』
会長の質問に淡々と答えると深く溜息を吐かれた。
キョウくんも会長も失礼だな。
不意に会長が手を握ってきた。
所謂恋人繋ぎというやつらしい…。
こないだマスターに教わったから確か。
「どっか行って来たのか。」
『一通り回って来たけど。』
一体何が言いたいのだろうか。
はっきり言えばいいのに…。
最近会長にされるがままの自分が嫌だ。
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