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7 終



事情を風紀の人に根掘り葉掘り聞かれ、やっと帰してもらえたのは7時少し前だった。


「…ただいま。」



自室の玄関に入り、小さく呟いた。
共同スペースのドアを開けると、コノは未だ帰ってきてはいないようだ。

安堵の息を吐いて、制服のままソファーに倒れこんだ。


がちゃりとドアが開く音が小さく聞こえたが、出迎える気になれず、瞼を閉じた。



「月?」

「んー。」



そのまま寝てしまおうかとも思ったが、バレた時が面倒だから片手を挙げて返事をした。



「ご飯食べた?」

「…いらない。」

「……なんかあった?」



コノはいつも僕を優先し、心配してくれる。

これ以上頼りたくない。
迷惑、掛けたく…ない。



「っ、コノぉ〜…!」

「よしよし。今度はどうした?」



嗚呼…、また頼ってしまったと言った後で後悔。

でも口が止まる事はない。



「…っ、僕、どうすれば……っ、蓬来様と話しちゃったぁぁっ…!!」



終始頭を撫でてくれるコノ。
やっぱり落ち着く…。



「月はどうしたいの?」



優しく問いかけてくるコノに僕は思い切り抱きついた。

本当、コノが同室者で良かったと思う瞬間。



「僕、ね。出来れば蓬来さまと…とっ友達になりたい、かも…。」



もじもじと、本音を伝えるとコノは笑った。

同性の僕でさえ見惚れてしまう様な顔で。



「…月はきっと、ファンクラブが出来るだろうね。」

「?、僕が…?」



いきなり何を言い出すかと思えば、コノは僕にファンクラブ、つまり人気者になると言った。

瞬時に有り得ないよ!と否定したけど。


コノは唯微笑むだけ。



「コノ?」

「俺が全面的にバックアップしてあげる。」

「い、いいの!?」



その問いに、笑顔で頷くコノに再びキツく抱きついた。

この時僕はコノの顔を見てなかった。悲しそうに歪められたコノの顔を。




その後念願叶って僕は蓬来さま、否れーちゃんと友達になれた。

報告しようとコノの部屋の扉を開けたが、既に蛻の殻。


心配して電話やメールをしても無駄だった。



「嫌われ、ちゃった…?」



僕が頼ったから?頼りすぎたから?

…分からない。全然っ、わかんない…!








(欲しいものを得た代わりに)
(大切なものを失った)




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