5 「鈴蘭の君が1人でいるなんて俺達ぁ、ツいてんなぁ。」 「ひっ…、さ、触らないで!」 訳の分からない事を言ったかと思えば、突然1人が肩に触れてきた。 ぞわっ、と鳥肌が立つ。 僕の反応にげらげらと下品に笑う4人組。 ……もう我慢の限界だ…。 耳にしてあるピアスに手を掛けようとしたその時。 「うわっ!?」 「な、なんだっ?」 強い風が吹いた。 そして僅かに力の気配。 正しく魔族の仕業だろう、と辺りを見渡すが誰も居ない。 気のせい…? 男達も気付いていないみたいだし、僕の気のせいだったのかもしれない。 「おい。」 「や、やめてよ!」 漸く風が止んだが、意識を僕に戻した男が、再び僕の肩に触れた。 抵抗するとがつん、と頬を殴られた。 「いっ、つ……。」 『今のは、一方的な暴力行為。』 頬を殴られた衝撃で頭が可笑しくなったのか、あの人の声の幻聴が。 男達の隙間から見えた、整ったあの人の幻覚まで…。 『…まったく、こんな場面に遭遇するのもマスターのせいだ。』 ぽつりと呟かれた言葉は誰の耳にも入らない。 男達を睨みつけているであろう冷たい目に、僕まで足が震える。 『貴方達4人を、拘束する。』 「っ、…は、黒薔薇の君にも出会えるとは、よっぽど俺達はツいてるらしいな。」 『ああ、そう。それはよかった。』 「分かってんのか。こっちは全員魔族だ。」 ぐっ、とあの人の眉間に皺が寄る。 貴様等こそ分かっているのか。 あの人は"あの"ゼロ=クラウンだぞ。 唸る様に後ろから睨みつけていても、蓬来零様に夢中な男達は気付かない。 『花蔓、目的(ターゲット)を拘束。』 「う、ぐぅっ…、」 蓬来様に向かって行った男達は呆気なく蔓によって捕まった。 冷徹な瞳は未だ変わることはない。 「大口叩いてた割には随分呆気なかったね。」 『……見てたの。』 「零がピンチの時に助けてやろうと思ってな。」 物陰から出てきた見覚えある2人に驚く。 男達も驚いている様だ。 初めに男達を見てせせら笑うのが、中等部風紀委員の香蓬院翠。 次に蓬来様に声を掛けたのが、中等部風紀副委員長の一ノ瀬雅臣。 2人共、中等部の人気者だ。 *前次# |