終わり。
【side:無】
零が、この世に生まれた時から見守っていた。
王の子だからではない。
唯、自分と同じ力を持つ者が久しく産まれた事が嬉しくて。
黒髪に碧眼。
黒は悪魔、碧は偽物……、魔族の風習や仕来たりで邪険にされていた。
殺すことも、あった。
そんなこと許せる筈もなく、零の母親には零を手離してもらった。
だが結果、零は奴隷になり、その膨大な力によって魔族と人間の争いに駆り出された。
闇の力を使い、人や魔族をも再起不能にしていく零を見ていられなくなり、零の中から闇を取り除いた。
「……何をしているのです。」
「…音の。零の闇を取り除いた。」
そうですか、と口にした音のが何を思っていたかなんて、私には分からない。
何時も見ていた、零を。
王である奴の側に居なくてはいけないが、王も零が気になるのであろう。
時々、零の近くで零を眺めた。
それ以外は氷の鏡を作り、時の力で零を見ていた。
零が人を殺す所も全て。
「ねぇねぇっ、無!」
「…邪魔だ向こうに行け、闇の。」
「なんでよなんでよ!構ってよーっ!」
「光にでも構ってもらえ。ほら。」
丁度、零達が"かんげいかい"というものをしている時。
何時ものように零を見ていた。
其処に闇が来てちょっかいを出す。私は闇を光に差し出す。
闇は光が嫌いだが、光は闇が好きらしい。
私にはどうでもいいが。
何時ものこと、だった筈。
闇の力が暴走した。なんでも、ストレスで。
しかも零が居る学園内で。
不の感情を持った人間はその力に触発し、自我を失い暴走。
大事には至らなかったが、1人は魔族、もう1人は人間だった。
「魔族なら未しも、人間が死んだらどうするつもりだったのだ。」
「…すいません。って!光も悪いじゃんか!」
「煩い。今はお前に言っている。大体お前は何時も何時も…」
其処からだらだらと小1時間ぐらい説教してやった。
本当はもう少し言いたい事があったのだが、音に言われて、諦めた。
「音、の。私は……、」
「あなたが悪い訳では在りません。」
零が力を失う事を選び、ミカエルの更生を望んだ。
これでもう、零は私達精霊の姿を見ることはない。
王は何故許した…?
…わからない。
零は膨大な力を持っていた。
勿論、その力を制御することも出来た。
次期王が居ないとなるとこの世界は…、崩壊する。
となれば中立に在る、零が居る学園も崩壊する訳で。
なんて最悪。
王の力無くては、この世界は保てない。
王はもう長くはないというのに。
どうするつもりだ。と王に問いただした。
「無属性はもう1人いるよ。」
「っ、だが未だ力の制御が出来ないではないかっ。そのまま王になったら、」
「誰が、今すぐ王を決めるなんて言った?勿論、教育するよ。」
笑う王。
日に日に窶れていってる。
沫月、といったかあの少年。
零の代わり、と王が零の名を出すと了承した。
零は、人間になってから毎日、大勢の人に囲まれて楽しそうだ。
魔族の時には見せなかった笑顔。
それを見る度、これで良かったではないか、と思える。
「ちょっと無!あんた僕を殺す気!?」
「黙れ。私は今、零を観賞しているのだ。」
「えっ!れーちゃんっ?なにそれ僕も見たい!!」
「煩い。それ以上騒ぐと燃やすぞ。」
「無、余り月を苛めたら王に言い付けますよ。」
「………。」
何だかんだで月とは上手くやっていけてる。と思う。
零を観賞することともう1つ。
私に楽しみが増えた。
「はーずーせぇぇぇ!」
「自力で外せ。」
鬼ー!と叫ぶ月を一瞥し、ほくそ笑む。
歴代の王を見て来たが、次はどんな王が誕生するのか、楽しみでならなかった。
(鳴り止まない)
(白鳥達のうた)
END.
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