朝。
暑くもなく寒くもない微妙な5月。
なんて過ごしやすい季節なんだろう。
あれ。
そういえば今日奴はいないんだっけ。
毎朝煩いのにたまに静かだと何故か寂しいと思うのは………気のせいか。
『うる、おはよう。』
ベッドの下で寝ていたうるに声を掛け、頭を撫でてやると目を閉じたまま尻尾を振るという器用なことをしてる。
うるはマスターに貰ったシルバーのシベリアンハスキー。
マスターはきっとその内出てくるからその時に説明することにして、学校に向かう準備をしなきゃ。
適当にご飯を食べて着替えて寮の部屋を出る。
『く、ぁ…。』
「れーちゃんっ、おはよう。」
欠伸を噛み潰しながら廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた。
ぱたぱたと近付いてくるそれは宛ら兎のよう。うん、今日も可愛い。
『おはよ、月(ユエ)。』
彼の名は沫 月(マツ ユエ)。
背低くいし顔も可愛いのでよく女の子に間違われるが正真正銘の男。
本人はそのことについてかなり気にしてるらしい。
「ねぇねぇれーちゃん聞いたっ?今日転入生が来るんだってー。」
『へえ…。』
「む、れーちゃんってばむかんしーん!」
頭の後ろで手を組みながら歩く月を見てくすりと笑みを零す。
転入生なんてどうでもいい。
自分の世界を壊されなければ、の話だけど。
いやでも…少し嫌な予感がする。
「あ、そういえば今日媛ちゃんいないの?」
『…起きたらいなかった。なに、天敵なのに気になるんだ?』
「て、天敵だから気になるのーっ!」
『ふーん?』
「なっ、なにその疑いの眼差し!」
『別に?』
「…れーちゃんの馬鹿。」
『はいはい。』
そんなくだらない事を話してる間に教室に着いてしまった。
あーあ、また1日が始まるのかぁ。
(つまらない毎日)
(壊れてしまえ)(コワレテシマエ…)
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