誤解。
【side:蓬来 零】
会長の部屋に行って見たもの。
右京と抱き合っていた…。
別に会長には好きだとか言われていないし、私だって言ってもいない。
だけど……、思わせ振りな行動取っといてそれは、ないんじゃないの…。
思わず声を発してしまい、会長に気付かれた。
勢いで逃げてしまったけど…、
『はっ、はぁ…っ、はな、してっ、』
「ふざけんな。」
追い掛けて来た会長に見事、捕まってしまった。
力を失った私が魔族から逃げられるか、と聞かれたら答えはノー。
息が切れる私に対し、会長は眉間に皺を寄せ、平然としている。
…くそ。
力さえ失っていなければっ、逃げ切れたのにっ。
『右京は、どうしたの。』
「知らん。俺には関係ない。」
『〜っ、じゃあ何で抱き合ってたの…っ。』
キョトンとする会長にしまったと顔を歪める。
これじゃあ……、まるでっ、私が嫉妬してるみたいじゃないか!
赤くなっているであろう顔を隠そうとしたら腕を掴まれ、引き寄せられた。
「あー、もう無理だ。これは脈ありって思ってもいいのか。」
『離せっ!』
「答えるまで離さない。」
『ぅ゙…、勝手に、すれば…。』
小さく呟くと更にきつく抱き締められた。
会長の嘘つき…!
『っ、くる、し…、』
「零、好きだっ。」
『わかっ、た…!わ、かっ…たから、っ!』
ようやっと苦しんでるのに気付いたのか、腕の力が緩む。
へたり込みそうな私の身体を支えた会長を下から睨み付ける。
「んな睨むなよ。」
『誰の、せいだと…っ。』
苦笑いする会長に何かがぶちんっ、と切れた。
拳を会長の鳩尾を目掛けて撃ち込む。
咳き込み、しゃがみ込む会長を見下ろしてから鼻を鳴らし、自室に戻る為、足を進めた。
(嬉しくなんて、)
(なかったんだからっ…)
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