好き。
ポケットからハンカチを取り出して月の涙を拭う。
『…ありがとう、月。
私も、月のこと好きだよ。』
「…れーちゃんの、ばか。」
早く行きなよ。
月が言った言葉に首を傾げた後、あぁ、と頷く。
誰かに聞いたのか、全て知っているとでも言うように見透かした目で見つめてくる。
だけど泣いている月を1人なんて…、と思ったが背を向ける背中を見て悟った。
独りになりたいのだと。
ごめん。
小さく呟いてから部屋を出た。
後ろから聞こえてくる小さな、悲しい歌声に気付いたら頬を濡らしていた。
【side:鴻 皇雅】
俺は零にとってどんな存在なんだろう。
時々考えるが答えが見つかることはなかった。
自室のソファーに寝転がりため息を吐く。
このまま寝てしまおうか、と考えていた所で、部屋のベルが鳴った。
「……んだ、右京か。」
「なんだって何っ!こーくんの馬鹿馬鹿!」
「あー、はいはい。」
零だったら良かったのになんて浅い考え。
投げ遣りに右京に返事をすると俯いてしまった。
生憎、部屋には入れる気はないので玄関の扉を開けたまま話す。
「こーくん…、あたし……っ、こーくんとっ離れ、たくない…!」
「……あのな、それは無理だって何回も言っただろうが。
それにお前は大学部。大して離れてねぇだろ。」
「でもでもっ…、毎日会えない!」
悲痛な顔を向けてくる右京。
なんてしつこいんだ…。
確かに、想いを伝えるのは自由だ。
だが俺には迷惑にしか思えない。
それは右京を思っていないからなのかは分からないが。
「好き…っ、好きなのっこーくん…!」
「何度も断った。」
「っ、最後だから…、暫くこうしてて……?」
ぶつかる様にして抱き着いてくる右京を引き離す理由もないからそのままにしておく。
右京に抱き締められながら、零は今どうしているだろうか、とぼぅっと考える。
(かい、ちょう…?)
(れい…。)
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