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ほんとう。
【side:蓬来 零】



『月。』

「あれ?れーちゃん、会計様のとこにいたんじゃ…?」

『ん、なんか居心地悪くて。』


解任、着任式をサボると言った月は屋上にいた。

隣に腰掛け、月の頭を撫でると手を取られた。



『月?』

「…ねぇれーちゃん、初めて会った時のこと覚えてる?」

『中3の時、だったよね。』



私の言葉に首を横に振る月。

あの時でなければもっと昔?
だけど私は月と会った記憶がない。



「"会った"、というより"見た"の方が正しいかな。
れーちゃんを初めて見たのは施設でだよ。」

『施設…ってことはまさか…、』

「授業参観の時嘘吐いてごめんね。僕、孤なんだ。」



伏せ目がちにぽつりぽつりと呟くように話す月を見詰める。

施設にいたということは月も奴隷だったということだ。



「あともう1つね、れーちゃんに嘘吐いてたことがあるの。」

『…うん。』



色とりどりの腕輪を外し、髪で見えなかったピアスも外した月。

何か、変わったのだろうか。



「…そっか。れーちゃんにはもう分かんないのか。」

『…?』



小さく呟いた月の言葉は聞こえなかった。



「僕ね、人間じゃないんだ。」

『は…?』

「れーちゃんと同じ、無属性なんだよ。」



顔を上げた強い瞳と目が合った。














【side:百鬼 憐】


あれから…、数ヵ月しか経っていないのに随分前のことのようだ。

それだけ、時間が経つのは早い。


キョウくんはレイが居なくてもあの頃の様にはならなかった。

よかったと思ってもいいのだろうか。
無理をしてる様に見える。



「はい。此れこないだの予算案。王がやり直し、だってェー。」

「あ゙?何処がやり直しだよ。」

「んー、自分で見つけろってェ。」



オレの言葉に小さく舌打ちをしたキョウくんは数枚の書類を見直し始めた。

キョウくんが座る側のソファーに腰掛け、口を開く。



「キョウくんはさァ、レイがいなくなって寂しくない?」

「………。」



煩ぇ、と呟いたキョウくんに構わず言葉を続ける。



「キョウくんが此処に居ろ、って言えばレイは行かなかったと思うんだけどなァー。」



違うー?
小首を傾げ、キョウくんを見詰めると軽く睨まれた。

オレに言われなくたって、キョウくんはきっと分かっていた。


だけど分かっていて何故それを"言わなかった"か。

全てはレイの為。



「…なぁ、レン。父親が娘を嫁にやるって、こんな感じなんだな……。」



ぽつりと呟かれた言葉。

違うでしょ?キョウくんにとってレイは娘じゃなくって、それ以上に大切な子、だったくせに。



「…そう、だね。」



なんて、口が割けても言う気にはなれなかった。











(なんて)(悲しい結末)






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