懐かしい人。
もう少しで来るという言葉を頭の片隅に入れておいて、強くサクの手を握る。
握り返してこない手に不安が募る。
もしも、このまま……。
そこまで考えて首を横に振る。
「王を呼び出すなんていい度胸だね。」
「あー、何で俺も……」
『おとう、さん…。なんで?』
数十分して現れたのはお父さんと、昔何処かで会ったことあるような男の人。
うーん、思い出せない。
「紹介は後にしてェ、ちゃっちゃとやっちゃってよ、ナギ。」
「そう簡単に言うんじゃねーよ。…つーか正気に戻んの遅ぇんだよ、糞キョウ。」
「あぁ?やんのか、馬鹿ナギ。」
ぎゃいぎゃい騒ぎ始める2人を困り顔で見るお父さんとレンくん。
というより、皆サクのこと忘れてない?
「はいはい。久しぶりで嬉しいのはわかるけど、早く済ませるよ凪。」
「お、俺は別に嬉しくねぇ!!」
「照れるな照れるな。」
「てめ、キョウ!ぶっ殺す!」
再び騒ぎ始めた2人に痺れを切らして、水の蛇を間すれすれに飛ばす。
ばしゃりと壁にぶつかり弾けた水が2に掛かる。
『あ。』
「「レーイィィ…?」」
『いや、その……、ね?』
「誤魔化すんじゃねぇよ。そういう時は謝れって教え、ぁだ!!」
凪、と呼ばれていた人が話してる途中、キョウくんに叩かれた。
そしてまた騒ぎ始める……、前にお父さんが制止した。
「凪、それ以上やったらぶっ飛ばす。」
「すいませんでしたお父様。」
あれ、お父さんなんか口調が……まるでマスターみたいだ。
凪はお父さんに引き摺られ、サクの側についた。
部屋の外に出てるように、と言われ大人しく廊下で待つ。
『キョウくん、私…、』
沈黙の中、重い口を開く。
言わんとしてることが分かるかのようにキョウくんは目を伏せる。
「俺は別に、レイに帰ってこいなんて言わねぇよ。好きなとこに行けばいい。」
『でもまたキョウくんが…っ、』
あんな風にまたなってしまったら…。
それなら、私はキョウくんと居た方がいいんじゃないのかな。
夜李さんはきっと分かってくれるし…っ、お父さんだって……、仕方ないねって笑ってくれる。
あの事だって…、違う人を探すって、言ってくれる……。
キョウくんは私の考えていることを察したのか、溜め息を吐いた。
(向き合わなきゃならない)
(だから、逃げるなレイ)
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