過去の自分。
ゆっくりと頷いた私を促すレンくんを置いて、1人キョウくんの部屋まで走る。
「っはぁ、はぁ…っ、」
襖の前まで来て息を調えてから、襖を開ける。
木製の大きな机と黒革の椅子に腰掛けているキョウくんと目が合った。
眉間の皺を深くするキョウくん。
「あ゙?誰だてめぇ。」
『…サクを解放してください。』
「出てけ。邪魔だ。」
『キョウくん…!』
名前を呼ぶと、ぴくりと反応した身体。
再び此方に不機嫌な顔が向けられる。
「…そう呼んでいいのはレイだけだ。
おいレイ、コイツ追い払え。」
「はい、キョウくん。」
『わ、たし…?』
何処から出て来たのか、突然現れた自分。
にこりと笑う9歳の頃の自分に目眩がする。
違う。こんな笑い方私には出来ない。
気付いてキョウくん…、其れは私であって私じゃない。
「失望・落胆・憎悪…異香に寄せられ、心魂に闇を誘う。」
『なん、で……、ぅ゙あぁ…っ。』
なんでなんでなんでなんで…!!
あの時の私は闇の力は使えなかった!
なのに何で…っ、目の前で薄笑いしている自分は闇の力を……、
頭の中に流れ込む映像に目眩と吐き気がする。
しゃがみこむ私の肩に、いきなり現れたレンくんが手を置いた。
ぶつり、と映像が切れる。
「ねェ、キョウくん。もう終わりにしようよ。」
「あ゙ぁ?んだよレン。そいつの味方になったのか?」
「…そうだよ。オレはレイの味方だからァ。」
何言ってやがる、レイは…、と口にしながら周りを見渡すキョウくんの目に、小さい自分は映らなかったようだ。
探すキョウくんを余所にレンくんが耳打ちしてくる。
"もう時間がない"と。
(立ち上がり)
(彼の前まで歩いた)
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