眠り。
あの頃から何も変わっていない豪邸を目の前に少し怖じ気づく。
だけど立ち止まっては居られず、ゆっくりと歩を進める。
「レイ、待ちくたびれたァ。」
『レンくん…、ごめんなさい。』
大して怒っていないレンくんが玄関扉に寄り掛かって待っていた。
此処に…、キョウくんがいる家に来たのはレンくんに呼ばれたから。
現状を見ろ、と。
長い真っ直ぐな廊下の突き当たり角部屋まで無言で歩く。
レンくんの手によって襖が開けられた。
此処は確かサクの部屋。
「サクー、レイが来てくれたぜェ?」
『っ!!』
息をのむ。
サクの状態に驚いて声が出なかった。
ベッドに横たわるサクの目は開く気配はなく。
身体中に笛吹水仙の根が張り巡らされている。
中心には笛吹水仙の花が。
「もうすぐこの花は枯れてェ、サクは死ぬ。」
『優しい追憶、…キョウくんですか。』
「こんなこと出来るのアイツしかいないっしょォー。」
『止めないんですか…。』
そう問えば首を横に振った。
サクに触ろうとしても弾かれて触れるのは不可能。
『炎で燃やせば、』
「だァーめ。サクまで巻き添えくらうから。」
『じゃあどうすれば、いいんですかっ。』
「…キョウくんをどうにかしないとだねェ。」
居場所を聞くと自室にいるという。
部屋を出ていこうとしたら、苦虫を噛み潰したような顔のレンくんに止められた。
「レイ、現状を把握しろって言ったのはオレだけど、キョウくんは壊れてる。
きっとレイのことも分からない。」
(それでも)
(会う覚悟はある?)
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