昔話1
【side:鴻 皇雅】
俯いてはいるが耳を塞ぐ気配がない零に安堵しながら昔のこと、過去のことを話始めた。
フェニ家(現在は鴻家)に生まれた俺達。
その頃、魔族の風習や仕来たりが未だ強く残っている時だった。
双子として生まれてしまった俺達。
双子は魔のモノ。同性なら一方を殺す、異性なら遠く離れた所へ。
幸いなことに異性だった俺達は物心付く前に当然ながら別居。
小学生に上がる頃、初めて妹の存在を知った。
ちょうど人間と魔族の戦争が起こった時だったから、親や家の者に絶対外に出るなと毎日のように言われた。
だけど俺はどうしても妹が見たくて、昼間こっそり抜け出した。
外は以外にもしーんと静まり返っていた。
これ幸いとばかりに早足で目的地に向かおうとすると、何かがぶつかってきて、その何かの下敷きになった。
「な、んだよ…これ…、」
見れば血だらけの男。
もう手遅れなのかぴくりとも動かない。
怖くて、退かそうにも子供の力じゃ無理だ。
誰かに助けを求めようと、隙間から腕を伸ばした時。
艶やかな黒髪は返り血がこびりつき、服も血塗れな女の子が無表情で此方を見ている。
「またしんじゃった?主人さま。」
表情が変わらない女の子はこてん、と首を傾げた。
その仕草にどくんっ、と胸が高鳴った。
話したいと思った。
「た、助けて…っ!」
「?だれかいる。みかた?てき?」
「俺っ、魔族…!味方、だから!」
「…みかたはたすけなさいってせんせが言ってた。」
少し考えた後に、結論が出たのか腕を前に出し、強い風で俺の上の奴を吹き飛ばした。
呆然としてる俺の目の前に小さな掌が差し出された。
迷ったが、その手を掴むことにした。
「血、ついちゃったね。」
「お前の方が、酷い…。」
「そう?あ、ねぇはやくおうちかえったほうがいーよ。」
「なんでだよ。」
知らないの?とでも言いたそうな女の子は又もや首を傾げた。
(きけんくいきだよ?)
(なんのだよ)
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