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正体。
【side:香蓬院 翠】


ああ、授業参観なんて面倒。
誰の親かもわからない奴等から媚びられるなんて。



「いたいた。まったく、手間取らせないでよね、……孤天才ハッカーさん。」

「……会計様。何故僕だと?」

「あははっ、可笑しなこと言うね。君、零に嘘吐いたでしょう?」

「…聞いていたのですね。」



男にしては華奢な体をくるりと此方に向けて、綺麗に笑った。

疑心から確信になったのはつい最近だ。
零は知らないかもしれないが、彼の右腕に黒、黄、赤、白の腕輪。
左腕には青、茶、灰、桃、水色の腕輪。

更に、今は少し長い髪で見えないが、透明なピアスをしている。


此れ等は全て魔族専用の抑圧具。(力を抑える為のもの)

彼、沫 月は人間ではなく魔族。
しかも属性は零と同じ無。



「全て知ってるようですね。僕が魔族だということも。」

「…何で零に近づいた?」



一息おいて話始める沫を黙って見詰める。



「れーちゃんと初めて会ったのは施設ででした。
親戚も居なく、両親は他界。
僕はれーちゃんに3回も救われた。」

「へぇ、零が?」

「はい。
れーちゃんが貴方に引き取られた時、僕はどうしても会いたかった。

だけど何故か周りは、れーちゃんのことを教えてはくれなかったんです。」



目を伏せ、俯く沫の表情はわからない。

だけどまぁ…、零に危害を加えなければ沫が何を考えてるのかなんて、俺にとってはどうでもいい。



「零の過去を知りたくて、ハッカーになったってことだよね。」

「はい。僕はれーちゃんの情報を掴み、この学園に入学しました。」

「ふーん…。それで?」

「え?」



顔を上げ、不思議そうに目をぱちくりする沫。

あーもう、わっかんないかなぁ。
俺は零以外どうでもいいんだって。



「君は零を傷つける?」

「…そんなこと、あるわけないじゃないですか…。」

「そう?ならいーや。この話はこれでおしまい。」

「え?あ、ちょっと!」



ばいばーいと手を振りその場を後にする。


れーちゃんは僕の…と沫が呟いていたのは聞こえない振りをした。










(あの子は俺の)
(ショユウブツ…)







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あきゅろす。
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