戻ってきて。
何年振りだろうか。
私を覚えているだろうか。
ねぇ、お父さん…。
『っは、…はぁっ、』
荒い息を調える。
会ってどうするなんてわからない。
だけど…、だけど…体が勝手に動いてしまった。
静かな風がそよぐ中、私はお父さん"だった"人の前に立つ。
白いベンチに腰掛ける彼は、私に気づいたのか俯いていた顔をゆっくり上げた。
『…あ、の……』
「だれ?」
重く、深く、胸に突き刺さる言葉。
思い知らされた現実。
もしかしたら、という淡い期待は見事に裏切られた。
目から何かが溢れ落ちそうになるのを必死に堪えた。
落ちる…!
そう思った時、ふわりと頭を撫でられた。
「ごめんね、冗談だよ。
…ずっと探してた、ゼロ。愛しい我が娘を忘れたりしないよ。」
『お、とうさ…』
「まだそう呼んでくれるの?
今まで頑張ったね。おかえり。」
『ぅ、え…っく…』
辛かったつらかったつらかった!!
幼い頃から1人ぼっちで…っ。
くるしかった。かなしかった…。
何度貴方に会いたいと願ったか…。
叶わなかった願い。
でもその代わり、家族を見つけた。
「俺と暮らそう、ゼロ。彼女とは別れたんだ。
だから…、ね?」
『だ、っめ…!』
彼等を裏切れない。裏切っちゃいけない。
確かにお父さんには会いたかった。だけどそれは、戻る為じゃない。
首を横に振る私にお父さんは、ふぅと息を吐いた。
全てを話すと。
【side:百鬼 憐】
2人から見えない影になっている所から話を聞いた。
王は真実を話してしまった。
このことがキョウくんにバレたら………、想像しただけで目眩がする。
2人に聞こえない程度に溜め息を吐くと、地面に影が出来た。
「なーにィ?皇雅クン?」
「…名前を呼ぶな。気色悪ぃ。」
「アッハ、ひっどいなァー。」
不味い。
何故こいつが此処にいる?
だめだ。どうにかして2人から離れさせなければ。
あの話は誰の耳にも入れてはいけない。
広まれば彼女は……、オレ達に2度と心を開いてくれなくなってしまう。
こいつを怒らせて離れさせるか…。
「そォーいえばさァ、キミの双子の妹。なんてったっけ?」
「…媛乃がどうした。」
「そうそう!媛乃チャン!
歓迎会の時、あっぶなァーい情報に手ェ出して取り付かれたらしいねェ、闇に。」
「なん、だと…?」
顔を歪ませる目の前の奴に、ニヒルに笑う。
もう少し、あと少し。
最後に止めを刺す為にゆっくり口を開いた。
(このオモイはきっと)
(オレのハジメテ)
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