親バカ。 教室の窓から見える校庭にぞろぞろと人が溢れている。 この学園にいる生徒の保護者達だ。 授業参観たるものをする理由…、自分の子供の様子を見るのが1つ。 もう1つは、力あるものに取り入る為。 この世界での1番は魔族である王族の者。 次に大天使の姓を持つ者。 その下が鴻、香蓬院、萩元。 …会長のお父さんとか、どんな人なんだろ。 い、いや別にっ、関係ないけど! 「れーいーちゃん?」 『ぅ、わ…!ゆ、月…、』 「1限目終わったよ。」 「何慌ててんの、零。」 何故か媛乃に冷めた目で見られた。 もしかして考えてることバレた…? よし、此処は話を変えるに限る。 『授業参観って何限から?』 「さっき先生が言ってたじゃない。2限からよ。」 「き、緊張するね。」 そんな話をしていたらあっという間に10分休憩は終わり、始業を知らせる鐘が鳴る。 席に着く生徒を横目に、再び視線を窓の外に移す。 平和だなぁ、とほのぼのしていると教室の後ろのドアが開く音が聞こえた。 生徒達がざわつく声と同時に耳元で響く声。 「零、話をちゃんと聞かないとだめじゃないか。」 『っ、夜李、さん…。』 「しっ…、授業妨害はだめだろ、零。」 人差し指を口許に当てる夜李さん。 寧ろ妨害してるのは夜李さんじゃないか。という思いは言葉に出来なかった。 というか、マスターの所より私の所に来ていいのか? 取り敢えず唯々早く授業が終わるのを待った。 「零、ちょっとおいで。」 連れてこられたのは教室の近くの空き教室。 態々誰もいない所に連れて来たということは、聞かれたくない話でもあるのだろうか。 「翠は最近どうだ?」 『どうって…別に変わりなく、ってまさか夜李さん……、』 深刻そうな顔で俯く夜李さん。 こう見えて親バカな夜李さんにマスターはうんざり。 昨日もかなり電話を掛け、怒られたとか。 「来るなと言われてしまった…。」 『あ、はは…。』 もう乾いた笑いしか出てこない。 何となく、そう唯何となく中庭が見える外を一瞥した。 『…っ!!』 「零…?」 『っ、ごめん夜李さん。また後で…!』 「あ、おいっ、零!」 風を使って急いで中庭に向かう。 早く、早く…! (なんで…) (此処にいるの…?) *前次# |