戦略。
【side:蓬来 零】
媛乃を保健室に連れて来た私達は目が覚めるのを待つしかなかった。
その間、音先輩とは会話がない。
小さく息を吐くと遠くで嫌な気配がする。
侵入者、ではない。
これは媛乃と同じ……、
『音先輩、直ぐ戻るんで媛乃のこと見といて下さい。』
「えっ、あ、はい!」
勢いよく立ち上がり目的地まで風に乗って飛ぶ。
ちりん、と首輪の鈴が小さく鳴る。
マスターが呼んでる合図。
『早く…っ。』
やっと着いた頃には、十数名の生徒が倒れている中心に1人の見知らぬ生徒が立っていた。
酷いな…。
周りを見るとマスター、会長、、書記、日向、雅臣、月とあと、拓海が少し遠くの方で立っていた。
仕方なしにマスターの隣に行くと、早速状況説明。
どうやら突然現れたあの生徒に人間の一般生徒が攻撃されたらしい。
風紀総出で向かったが呆気なく倒され、今現在。
ということはあの倒れてる生徒は皆風紀委員なんだ。
「零、あの生徒に見覚えは?」
『ない。それよりマスター、此処で何してたの。』
「様子見。いきなり突っ込んだらそれこそ全滅するよ。」
確かに。
相手の動きを観察するのも戦略の1つ。
マスターは何かわかったのだろうか。
隣を一瞥すると目が合った。
「1人1人攻撃していこうと思うんだけど、どう思う?」
『いーんじゃない。』
「そう。てことで先ずは雅臣からね。ちょちょいと倒してきてよ。」
楽しそうに笑いながら言うマスターにキレる雅臣。
うん、何時もの光景だ。
で、結局雅臣が負ける。
これも何時もだ。
「雅…、行くの?」
「平気だよ日向、雅臣は不死身だからね。」
「んなわけねぇだろーが!人間だ俺は。に・ん・げ・ん!!」
心配する日向の頭を撫でると擦り寄ってくる。可愛い癒される。
1歩前に出た雅臣は、骨ぐらい拾えよと呟いた後、生徒に向かって全力疾走した。
手には竹刀が。いつの間に。
「うぐ…っ!?」
竹刀を振り上げた直後、腹を殴られ吹き飛ばされた雅臣。
空中で体制を立て直し、綺麗に着地したものの殴られたところが悪かったのか、片膝を着いた。
「んじゃあ、次は私ね!」
玩具で遊ぶ子供のように楽しそうな書記が前に出た。
生徒会書記、右京 李兎(うきょういう)。属性は雷。
ビリビリ少女。
ついでに言うと……、
「こーくーん!私、こーくんの為に頑張るわっ!」
「あー…そうか。」
会長大好き野郎。(いや女だけど)
まぁ、右京が誰を好きになろうが私には全く関係ないのだが…、多々喧嘩を売ってくるのだけはやめてほしい。
(会長なんか、)
(なんとも思ってない)
*前次#
無料HPエムペ!