隠し事。
がら、と扉を開くとお目当ての人物が調理台に腰掛けていた。
体を反転させてにこりと微笑む媛乃。
だけどその顔は…、
「第3ポイントへようこそ。零に音葉先輩。」
『媛乃、なにをしてるの。』
「挑戦者待ちよ、零。」
『違う。最近、なにをしてる?』
笑えてない媛乃。
ここ1週間私と月を避けてる媛乃。
なにをしていた?なにを知った?
わからないけれど……、媛乃はなにかを知ってしまった。
「……零、貴女とは戦いたくないけれど……、仕方ないのね。」
『……。』
「れ、零様…?」
構える媛乃に戸惑う音先輩。
本気なのかそれとも誰かを欺く為の演技なのか。
後者であってほしいと願うも、気づいてしまった事実。
媛乃の中は今、"不"の感情でいっぱいだ。
『…誰になにを吹き込まれた?』
「わからないわ。忘れてしまった。」
「ちょ…っ、零様!落ち着きましょう!?
ね、副会長様も!」
『…氷柱、それは狂戯。』
音先輩の制止も聞かず尖った氷を投げつけるが、あっさり掌の炎で蒸発させられてしまった。
流石は媛乃、と思ってもいいのだろうか。
「火纏い躰、豪炎しろ。我は絶体為り…。」
ゴオ、と媛乃の周りを渦巻く炎。
身体の一部に炎を纏うのではなく全体に纏うとは…、
そうか、それなら此方も全力で戦おう。
「れ、い様!!教室が壊れてしまいます…!!」
『この学園の校舎はある程度の耐性ならあります。音先輩、下がってて。』
音先輩を後ろに下がらせてから、掌を媛乃に向けて口を開く。
媛乃は動かない。
その顔には表情が無い。
『炎をも欺くその能(ちから)。繋縛しろ、生命よ。』
木や蔓が媛乃の体に巻き付く。
動きは封じた。
さてどうしてくれようか。
取り合えず頭でも冷やしてもらおう。
水の魔術を使い、媛乃の頭から冷水をぶっかけると水が蒸発し、靄がかかった。
『媛乃…!』
靄が晴れると蔓に絡め捕られた媛乃は気を失っていた。
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