勝負。
転寝してる男の近くには"第1ポイント"と書かれた立て札がある。
…しょうがない。
起こさなければ次の行き先が分からないので近づくと、気配で起きてくれた。
「…っ、やべ…、寝てた。」
『此処ではなにをすればいいの。』
「ん?…おお。黒薔薇の君、零サマじゃねーか。近くで初めて見た。」
見た目とは反する話し方に少し驚いた。
肩まである黒髪。整った鼻、薄い桜色の唇。
すらりとのびた足、腕には風紀の腕章をしているから風紀委員なのだろう。
会長とは違った意味で完璧だった。
可愛いより美人。その言葉がぴったりだ。
『何をすればいいか、と聞いているんだけど。』
「わかったって。じゃ、まず自己紹介からな。」
『いや、別にそんなのいいから早く…、』
「風紀委員、1―S、拓海 奏(タクミソウ)だ。」
自己紹介がしたかったらしい拓海は満足そうに微笑んだ。
そして私の隣に目を遣る拓海に何故か背後に隠れる音先輩。
「た、拓海…、まだ怒ってんの…っ?」
「虎燈、覚えてろ。」
「だっ、だってぇ〜…、」
何だか知り合いの様子な2人。
それより早く次の行き先を知りたいんだけど。
もうすぐ他の生徒が来てしまうのに。
痺れを切らして拓海を止めるともう1度何をすればいいか聞いた。
「此処では、俺と勝負してもらう。」
『勝負?』
「制限時間は1分間。どちらがやる?」
何か秘策でもあるのか、にやりと口角を上げる拓海。
音先輩は武術向いてなさそうだし、ここは私が相手をするしかないのか。
1歩前に出ようとすると私より先に音先輩が足を動かし、凝視してしまった。
まさか、音先輩が…?
「零様の手を煩わせるなんてとんでもないです。僕が相手を。」
『でも音先輩、』
「僕、音葉家の次期当主なんです。」
『やはり音葉家でしたか。』
音葉家といえば格闘技。格闘技といえば音葉家という方程式が成り立つぐらいの名門。
初め名前を聞いた時にもしかしてと思ったが、当たっていたみたいだ。
「手加減しねーからな、虎燈。」
「こっちだって。」
「よし、じゃあ始めるぞ。オセロ。」
「『は…?』」
正座してオセロ台を用意し始める拓海に唖然としてしまう。
早く座れと音先輩を促す拓海に為すがままの音先輩。
スタートの合図を頼まれ、やっと勝負が始まった。
(やったー!僕の勝ちー!)
(ちっ…、甘くみすぎた。)
*前次#
無料HPエムペ!