スタート。
【side:蓬来 零】
新入生歓迎会当日の体育館内。
昨日から媛乃の姿が見えないことを不思議に思いつつ、会長にはもちろん聞ける訳がない。
よって会っていないのだが、今日はきっと会えるであろう。
何てったって歓迎会は強制参加なのだから。
「零様!」
『音先輩、おはようございます。』
「お、おはようございますっ、零様!」
ぎくしゃくしながら挨拶をする音先輩。
年下である自分に敬語、況してや様付けなんておかしいのではないのだろうか。
そう聞くと音先輩は、これだけはどーしてもやめられないと言った。
…何だか腑に落ちないが音先輩が言うならしょうがないの、か?
「はーい!皆、ちゅうもーく!!」
突然声が館内に響き渡り壇上には生徒会、風紀の面々が揃っていた。
きゃーだのわぁーだの黄色い声が同時に沸き上がる。
『…うるさい。』
「しょ、しょうがないですよ、零様…。皆様人気なんですから。」
2人して眉間に皺を寄せて周りを見渡す。
壇上には勿論生徒会メンバーであるマスターも媛乃もいるわけであって…、何となく気まずい。
「静かにぃー!
それではっ、ルールを説明するよ〜!」
今からルールの説明をするのは生徒会書記、如月 火之魅(キサラギコノミ)。
属性は氷。身長は172cmで細身の為、見た目は華奢に見える。
名前を聞くと女の子のような名前だが正真正銘の男だ。
本人は結構名前を気にしているらしい。
「先ずペアはもう組んであるよねー?
ワンペアずつスタート地点が書かれているクジを引いてもらいまーす!
スタート地点はA、B、Cの3種類!
場所によって難しくなるからそれは運次第!
所々に謎や妨害があるからね〜。
後は、1ヶ所のゴールに向かって進んでいくだけ!
しかぁーし!俺達、生徒会と風紀が邪魔するから簡単にはゴール出来ないと思ってね!」
説明が終わった後、ぞろぞろとクジが入っている箱を持った数人の生徒の所に並ぶ。
やっと出番が来て残り少ない紙を掴むと其処に書かれていたのは"A"の文字。
Aは第2音楽室。
向かうと溢れんばかりの生徒の数。
道を開けてくれるのは嬉しいけどそんなに見ないでほしい。
注目されるのは好きじゃない。
「あっ零様、黒板に何か……答えを導け?」
『花…?』
小さい植木鉢に1輪の花。
赤いチューリップだ。
黒板にはもう1つの文字が書かれている。
「これがよく行われる場所……、あ!わかりましたよっ、零様!」
『赤いチューリップの花言葉は"愛の告白"。行きましょう、音先輩。』
「はい!」
告白が行われる場所と言えば第1校舎の屋上。
此処からだとかなり遠いけれど…、面倒だし魔術を使ってしまおう。
…ルール上、使っちゃいけないなんてないし。
廊下に出て、がしりと私より少し小さい音先輩の腰を掴む。
「れっ、れれれ零さま?!!」
『掴まって、音先輩。…浮上、静寂な風よ、我等を運べ。』
「ぅ、わぁぁ…。」
ふわりと身体が浮きかなりの速さで移動する。
あっという間に到着し、扉を開けると誰かが壁に寄り掛かって転寝していた。
(…起こすべきですかね。)
(でも次の行き先分からないですよ?)
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