俺のモノ。
少し変われた気がする。
全てマスターのお蔭。マスターが変えてくれた。
「よかったよ。」
『ご心配、申し訳ありません。』
「謝ることではない。勝手に心配していたんだ、気にするな。」
髪を梳かれ、頭を撫でられる。
なんて心地良いのだろう。
微笑む旦那様に微笑み返すとがちゃり…と小さな音で部屋の扉が開いた。
顔を覗かせるブロンドの綺麗な2つの頭。
『ますたー…?』
呼び掛けると足早にこちらに向かってくる。
眉間に皺が寄っているのは気のせいかな。
無言でぎゅっ、と抱き締められる。
旦那様の方を伺うと旦那様の腰にも抱き着いている人が。
「仲間外れは嫌よ、夜李(ヨリ)。」
「零は俺のなんだから。」
不貞腐れてる2人を見て再び旦那様と一緒になって笑ってしまう。
マスターの性格はお母様に似たんだなぁと改めて思ってしまった。
その後、連休は必ず帰ってくるという約束をして学校に行くことになった。
学園に来てから5年後。
「お前が蓬来零か?」
『鴻…、』
SSクラスのトップ、鴻皇雅。
マスターと萩元日向の幼馴染みなこの男、直接話すのは初めてだ。
教室にはあまり顔を出さないのだから仕方ないといえば仕方ない。
「頼みがある。」
『……断る。』
「そう言わずに。」
マスターから貰った(無理矢理付けられた)黒い首輪に人差し指を引っ掛けられ、手前に少し引っ張られる。
りん…っ――
鈴が小さい音を発てる。
「皇雅、俺のモノに何してんの?」
少し離れた所でクラスメートと談笑していたマスターがやっと口を挟んできた。
此方をちらちら見ていたから気になってはいたのだろうけど、気になるならもっと早く話し掛けてほしかった。
「零に何かしたらいくら皇雅でも…、俺何するかわかんないよ?」
「……わかったよ。」
言葉と共に手を離される。
目の前の鴻は眉間に皺を寄せてるし、マスターはにこにこしてる。
クラスの人達はそれを見て怯えてる様子。
……なにこのカオス。
堪えきれず溜息を1つ吐いて口を開く。
『…頼みって?』
「聞いて、くれるのか。」
『了承するかどうかは内容によるけど。』
「すまない。実は……、」
いつの間にかマスターはいなくなっていた。
気をきかせた?いやそれはありえないか。
そんなことより、鴻の言っていた頼み。
了承するべきか否か。
考えながら歩いていたらいつの間にか部屋に着いていた。
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