初めて。
【side:蓬来 零】
『で…、今日は何するの。』
「いつもどうやってんだよ。」
『マスターが決めてる。』
ぴりぴりとした空気が流れる。
盛大に溜息を吐いた会長から目を逸らすと頭を撫でられた。
……なんなんだいったい。
「もうやめよーぜ。お前と喧嘩なんかしたくねぇんだよ。」
『…会長のせいでしょ。』
「………可愛くねー。」
別に会長に可愛く思われたくなんかない。
その意を込めて手を振り払う。
喧嘩するとかしないとか、私の知ったことか。
今は只、顔をしかめる会長が気にくわない。
『帰る。』
「待て。喧嘩したくないって言ってんだろ。」
『では何をする。』
「…今日は音の特訓だ。」
音?
確かに音属性のものは出来るけど…、戦闘には使えない。
これまでマスターとだって音の特訓なんてやったことがない。
マスターが戦闘には使えないからって。
『…何をすればいい?』
「そうだな……、俺を眠らせてみろ。」
にやりと笑う会長に馬鹿にされてるような気がする。
眠らせるって子守歌とか、だよね。
出来るのだろうかそんなこと。
『子守歌なんてやったこともされたこともない。』
「零、ここに座れ。」
会長が指した場所は5人は座れるであろう椅子。
取り敢えず従って腰を下ろすと膝の上に会長の頭が乗る。(所謂膝枕というやつだ)
『……何やってんの。』
「歌え、零。思うままに、俺を寝かせてみろ。」
『わかった。』
何時も何時も、歌う時に頭に思い浮かぶのは"苦、不、痛、壊"の全て。
だけど今は…、温かい。心地良い。
目を開ければ会長は寝息を発てていた。
できたじゃないか自分にも。破壊以外のこと。
嬉しい。ただ単純に。
目の前にある柔らかい黒髪を梳いてると誰かが近づいてくる。
この気配は……、
「なぁにやってるの、零。」
『…マスター、遅い。』
そう言うとすっ、と目を細めるマスター。
ああ、まずい。怒ってる。
こうなるとマスターめんどくさい。
まず最初に口調が変わる。
「零、俺は何してるのって聞いてるんだけど?」
『…膝枕。』
「あ゙ぁ?何で皇雅にそんなことしてんだよ!」
うーん。
眉間に皺が寄ったマスター久し振りに……あ、2ヶ月振りだ。
ファンの子達に見せたら幻滅するだろうなぁ。
……見慣れすぎて怖くないんです。
「零、お前最近俺が目ぇ離してるからって調子乗ってんじゃねぇのか?」
『マスターだって好き勝手やってるでしょう。』
「俺のことはどうだっていいんだよ!」
自分のことを棚に上げるな。
マスターの方が自分勝手だし好き勝手やるじゃないか。
あー、なんかむかむかしてきた。
(え?無気力?)
(知るか、そんなもの。)
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