それは最強。
【side:蓬来 零】
泣き止んだ月と一緒に食堂に向かう(媛乃は忙しいらしくて断られた)。
何故ご機嫌なのかはわからないが鼻唄を歌う月を見てると微笑ましいというか可愛い。
「れーちゃん、今日は何食べるー?」
『んー、そうだな…今日は和食って気分。』
「じゃ僕ハンバーグにしよっと!」
『ふふ、月、今日は機嫌が良いね。』
「だってだって!久しぶりにれーちゃんと2人だけで食事なんだもーんっ。」
くるくる回る月の頭を軽く叩くと回るのを止めた月に手を握られ、そのまま手を繋いで食堂に向かった。
「目の保養になる!」と囁かれていたことも気づかずに。
「れーちゃん、あーん。」
『あー、ん。美味しいよ月。』
きゃああああああっっ!!
突然聞こえた黄色い声に耳を塞ぐことができなかった。
生徒会でも来たかと思い周りを見渡すがそんな様子はない。
何故騒いだのか。
首を傾げると月が息を1つ吐いた。
「…無自覚。」
『月に言われたくないけど?』
「僕は無自覚じゃないもーん。」
ぷくっと膨れる頬にまたもや周りから声が上がった。
可愛すぎるわ!月くーんっ、こっち向いてぇ!2人お似合いすぎる!
『…月、黙らせて。』
「れーちゃんってば…、面倒なことを人に押し付けちゃいけませーん!」
『だって月が食べるの遅いから出ることもできないし?』
「ゔ…、ゔぅぅぅ……。」
『唸ってもだめ、と言いたいとこだけど、今回だけだからね。』
瞬間、ぱああっと花が咲いたように明るくなる顔。
なんだかんだ月に甘くなってしまうのは駄目だと思いつつも、ついつい甘やかしてしまう。
息を1つ吐いてすくりと立ち上がり2回手を叩いてから口を開く。
『食事中のマナーぐらいわかってるよね。』
静かに、ゆっくり話すとぴたりと声が止まった。
静寂の中には物音1つしなかった。
お礼の意味を込めて微笑むと更にぴしりと固まった生徒達。
そこまで静かにしなくてもいいのに。
「ん、く。れ、れーちゃんっ、食べ終わった!だから早く帰ろう?ねっ?」
『何でそんな急いでんの?』
「いーからっ!!」
ぐいぐい腕を引っ張る月に着いて行って食堂を後にした。
その後訪れた会長達が1歩も動かない固まる生徒達を見て首を傾げたのは言うまでもない。
(どーなってんだ?)
(黒薔薇の君の微笑みは絶大ってね)(はあ?)
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