遭遇。
【side:沫 月】
静かな廊下を歩いていると目先に氷の塊がちらほら見える。
それを無視して歩いていく。
「…あ。」
今声を発したのは断じて僕ではない。
きょろきょろしていたその子に気付かれないように通り過ぎようとしたけど駄目だった(ちっ)。
え?僕の性格がいつもと違う?
そんなの当たり前じゃない。
れーちゃんにだけ、良い印象をあたえられればいいんだから。
「ねぇ、聞いてる?」
「……何か用。」
おっと。すっかり彼女を忘れてた。
この子見た感じというか…れーちゃんに迷惑掛けそうな感じだからあまり関わりたくない。
まあ、学年違うことが唯一の救いか。
「あなた食堂にいた子だよねっ。」
「そうだけど。それが何?」
「名前はっ?!」
「沫 月、だけど。」
「月ね!あたしは藤野 葵!葵ってよんで「無理。」
くるりと踵を返す。
友達になるなんてまっぴらごめんだ。
後ろで何か言ってるのを無視して歩き出すとがしりと腕を捕まれた。
もうやだなんなのこの子。
大体僕一応先輩なんだけど敬語はどうした。敬語は。
「待ってよ、月!生徒会室って何処?」
「生徒会室…?そこに行ったらどうなるか、わかってんの?」
そう聞いた僕をきょとん顔で見つめてくる。
わかってないなこの顔は(はぁ…)。
仕方ない。説明してやるか。
「ふぅ…、ファンクラブは知ってる?」
「あっ、それなら聞いた!確か会計のとこが1番過激だって…」
「そう。生徒会会計、香蓬院 翠様。生徒会室に行けば必ずと言っていい程居るよ。
例え君の目的が会計様に会うことではなくとも、あそこに近づけばファンクラブの連中が黙っていないだろうね。」
「…そんなの関係ない!」
吃驚した。
諦めてくれると思ったのに。
苛められるのが嫌で怖じ気づくと思ったのに。
嗚呼…、そういえばこの子、光属性って言ってたっけ。
嫌だなあ…、光なんて。
僕大嫌い。この子も、光も。
(眩しいだけだよ)
(光なんて大嫌い)
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