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思惑。



『ただいま…。』



会長と別れた後自室に直行。
玄関の扉を開けるとうるが既に待機していて尻尾を振りながら出迎えてくれる。


ふと下を見ると見慣れた靴が揃えてあり、うるの頭を撫でてから共同部屋に向かう。



「お帰り、零。」

『…マスター、今日のは一体どういうこと。』



嫌な笑顔を向けてくるマスターを軽く睨み付ける。

あんなことしてしまったら明日からファンクラブの連中が黙っていない。
…分かってやったのだろうけど、この人は。



「異分子なんて面白いもの俺が逃すと思ってんの?」

『面倒事は嫌い。』

「わかってるよ。巻き込まないから、多分。」



くすりと笑って足を組み直すマスター。
巻き込む気満々だな絶対。

溜め息を1つ吐くと小さく手招きをされゆっくりと近付くと腕をぐい、と引っ張られ呆気なく腕の中へ。



「多少目移りするけど最終的には零だから大丈夫。」

『何も言ってないけど。』

「でも零が目移りするのは許さないからね。」



色々話が噛み合ってない気がする。
いやマスターと会話は不可能だと思う。
今も昔も。



『私は別に、興味ない。』

「くす、またそーやって。何時も一緒にいる人間とか鴻兄妹とか、大事にしてるでしょ?」

『…別に。』

「素直じゃないなぁ。」



マスターの膝の上で横向きに抱かれていて見ようとすれば顔が見えるけどなんとなく見る気になれない。



「さっ、そろそろ帰ろうかな。双子妹が来る前にね。」

『マスター、あれは…』

「わかってるよ。懐かれなければいいんだから。」

『そういう問題じゃ、「また夜にね、零。」



膝の上からソファーに下ろされ何も言うなとでも言うように言葉を遮られた。

もしもがあった場合どうするつもりなんだろう。



『はぁぁぁ…。』

「わーん!!れーちゃぁんっっ!」

『わ、月?』



ばたん!と勢いよく扉が開くと突進してくる小さい生き物。

見ると目尻にうっすら涙が。







(ゔぅ…)
(1回落ち着きな、ね。)



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