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オレンジの景色(貴方へ)


委員会が終わった後の、夕日に染まるグラウンド。
わたしは今日も1人で眺めてる。窓から入る風がカーテンを揺らして、なんだか漫画のヒロインになった気分。

ずっと遠くにぽつんと動かない影。サッカーゴールの前に、わたしのヒーロー。

名前も何も知らない。向こうもきっとわたしの事なんて分からない。
ただ放課後にこうやって、ゴールの前にいる貴方を、教室から見ているだけ。

サッカー部なのかなあ。こんな時間まで、何してるんだろう。委員会さえなきゃ、部活の風景が見られるかもしれないのに。

小さくため息をついて、頬杖ついた手が少し冷たい。貴方は寒くないの?


最終下校時刻が近付いて来た頃、貴方は急に立ち上がって顔を上げる。
目が、合った気がした。

それだけ。それだけの事なのに、嘘みたいに脈拍が早くなって、身体中に熱が走る。

どうしちゃったんだろう。こんな、泣きそうに苦しいなんて。

照れ隠しで俯いてみると、小さな男の子が貴方に駆け寄る。

もう帰っちゃうのかな。いいな、あの子、仲良さそう。わたしだって一緒に…。

教室に響く、下校を促すチャイム。わたしは閉めた窓越しに、貴方の帰る後ろ姿を見送った。


明日はグラウンドに居残ってみよう。もしかしたら貴方に近付けるかもしれない。

こんな遠くから見てるだけじゃなくて、ほんの少しでも、貴方の世界に触れたいから。


「あの、名前なんて言うんですか?」






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