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寝顔にあいさつ

「あ、」


口に出した時にはもう遅い。視界がグラッと揺れて、そのまま地面と衝突した。痛い、とかそんなの当たり前なのに、痛い!最初にぶつかったおでこを撫でながら地面に目を向けたら、そこにあったのは大きな石でもないし、誰かが悪戯して縄を張ってたわけでもなくて。


「まじでか」


ごろん、と寝転んでる人がそこにいる。私がつまずいたのはこの子だったのか。それにしてもつまずかれても起きないなんて熟睡してるにもほどが…あ、る。
寝息が聞こえてくるほど深く眠っている彼は、とっても綺麗な顔をしていて、私は不覚にもどっきりしてしまった。え、どうしよう。とりあえず起こした方がいいのかな?制服とタイの色を見れば、彼は音楽科の1年生だってことが分かるけど…、腕時計を見ればあと数分で授業が始まる。やばいやばい!


「おーい」
「……」
「少年!」
「……」


だめだ、起きない。仕方ないよね、肩を揺らしてもう一度声を掛けて起こすことにしよう。寝起きが悪くて逆ギレとかされたらどうしよう、お願いだから素直に起きてね!

「ん、」と揺らすのにも疲れた頃、やっと彼は目を冷ましてくれた。ぱちりと開いた目は眠そうに瞬きをしてる。


「大丈夫?」
「…はい、大丈夫です」
「もうチャイムが鳴っちゃうよ、こんなとこで寝てたら風邪引いちゃうし…えっと」
「あなたは、誰ですか?」
「……普通科2年の…(話噛み合わない!)」
「先輩ですか…」
「じゃなくて!授業が、」
「おはようございます」
「え?」


そして綺麗に微笑んだ彼は、またそこで眠ってしまった。私といえば彼のペースに見事巻き込まれて頭の中がパニックだ。それからすぐチャイムが響き渡り、まぁいいか…と私もそこに倒れこんだ。


「おはよ、それからおやすみ」





あきゅろす。
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