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なくなった栞


本を開いてみるけれど、読み掛けのそれに挟んだ栞が見当たらない。ペラペラとめくっても、全てのページを指ではじいたってどこにも無いのだ。むっ、と顔をしかめた。まずいことになった。落としたなんてことをしたら、あれはきっと誰かに盗まれてしまうだろう。それだけは避けたい。

バッと席を立つと何かにぶつかった。衝撃を待つ恐怖で目をとじたのに、それは一向に襲ってこない。あれ?顔をあげれば月森が眉間にシワをよせていた。


「これはなんだ」
「はい?」
「これはなんだと聞いている」


少し苛立った様子で彼は私に写真を押しつけてきた。…あ、それ。私が無くした栞代わりの写真だ。「拾ってくれたの?ありがとう」と笑ったのに、彼はニコリともしない。まったく無愛想なやつだ。


「それをすぐ処分しろ」
「え!なんで!」
「当たり前だ」


彼は私からまた写真を取り上げて「返してもらう」と言った。ちょっと待って、信じられない!それは私が一生懸命頼み込んで貰った写真なんだから私のなのに!

手を伸ばしても、私の手は宙をかすめた。ああ、最悪。

教室から出て行く月森の背中を見つめながら思う、シャイなのかなんなのか。私の栞代わりの写真は返ってくるんだろうか。彼のセレクションでの格好いい写真。

(せっかく天羽さんから貰ったのに)






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