ルフィ
間違えた。こんな典型的な、甘い砂糖としょっぱい塩を間違えるというミスをしてしまうなんて思いもよらなかった。形は結構上手くいって、横にあるサンジくんのクッキーと見分けのつかないくらいなのに、のみこめないほど味が酷いなんて詐欺もいいところだ。
「どうしようサンジくんこれ…」
「もちろんおれが食べ」
「だめ!サンジくんの舌が狂ったら困るし…あ、そうだ良いこと思いついた」
思いたったら即行動。ちょっとルフィのところに行ってくるとサンジくんに言い残し、味の違いすぎるクッキーを1枚ずつ持ってキッチンを出た。最初は純粋にルフィのために愛を込めて作り始めたクッキーだけど、こうなってしまっては別の楽しみ方をするしかない。2人で1枚ずつ食べて、ハズレを引いた方が今夜の夕食を1品捧げるという賭けを提案しよう。
私はそんなにおかずにこだわりはないし、どんな口実でもルフィに手作りクッキーを食べてもらえるかもしれないのだから、損はない。
「というわけで、どう?」
「ふーん、いいぞ!」
「やった!じゃあ先に選んでいいよ」
「んー…こっちだ!」
「じゃあ私はこっちね」
せーの、と私の合図で口にクッキーを放り込む。形は全く違いがわからないと言って良い程の出来だし、においに出るほどの甘さでもしょっぱさでもない。流石のルフィも感で選んだだろうとドキドキしながら味を確かめた。
…甘い!美味しい!同時にルフィが「しょっぺえ!」と叫んだので、間違いなく私のクッキーが当たりである。
「そっち、私が作った方だ」
「やっぱそうか!」
「え?わかってたの?」
「おう。においでわかる」
「へー!すごい!」
「ししっ、おれが当たりだったな!」
ルフィは続けて、すげーしょっぱかったけどな!と笑いながら言った。
ちょっと待てよ。ということは、彼的には、サンジくんの甘いクッキーよりも、私の作ったしょっぱいクッキーが当たりなのか。私が愛だけは込めて作ったあの悲惨な味のクッキーが!
恋はギャンブル
(とりあえず次こそは絶対美味しいもの!)
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