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傍観者


時刻は午後8時をまわった頃。居間のソファに腰掛け寄り添うように肩を並べてテレビを見ている男が二人。それを居間から続きの台所にあるテーブルから眺めている俺、その向かえに長髪とそのペット。食後の一服、団欒。しかし纏う空気はそれぞれまるで正反対なのだから面白い。少し濃いめのお茶に口づけながら(土方がいれてくれた)、仲むずまじく掌を絡み合わせているほうを見る。

(おーおー、仲がヨロシイことで)

繋いだ手をむずがるようにじりと片方が身じろぎすればもう片方がそれを制す。押さえ込む力強い掌にどきりと緊張している男の頬は赤い。ドキドキと心音を速めているそれは離れたところに座る自分からしても伺うことができた、なぜなら鼓動に合わせて身体が脈打っているからである。

(意外とおぼごなんだよなあ)

ずずと茶を啜りながら観察する。あくまで何でもないように手を握りこんでいる男が実は楽しんでいることなど隣でガチガチになっている男はついぞ知らないだろう。あれはテレビの内容などさっぱり頭に入っていないに違いない、もちろんそのとなり悠然と腰掛けている男も煩いだけの箱などどうでもいいはずだ。意識が黒髪に向いてることなど誰もが察することができる。ゆるくあがった口許がそれを如実に伝えていた。


やわらかな毛色の男がふわりと隣りの彼に首を傾けた。こつりと肩に頭を寄せた瞬間おおげさなほどビクリと身体を強張らせた彼に思わず吹き出しそうになった。見れば耳許まで真っ赤である。


(ほんと、可愛いやつ)


これには銀髪の男も堪えられなかったようで小刻みに身体を揺らしては笑いをかみ殺している。おっまえなななに笑ってやがる!やーほんっと可愛いくて銀さんは幸せです。それはそれは甘ったるい光景に穏やかな気分になるがちらりと盗み見た正面の男はそうではないらしい。握りしめた湯呑みにひびが入ってるし自慢(らしい)の長髪はぶわりと逆立っておりまるで今にも南斗水鳥拳を繰り出しそうな雰囲気である。あ、やっぱりこの男にレイは勿体ないからユダでいいわ。ユダ様は本当に気持ちの悪いお方。

「つか…、テレビ見ねぇならお前先風呂入ってこいよッ。俺明日早ぇんだ…!」

なにやらもっともな事を言っているがそれが単なる照れ隠し以外のなにものでもないことをここにいる全員がわかっている。相変わらず顔は赤いし抑揚もなにか変だ。しかし突っぱねた腕を引かれ土方は銀髪の胸へ抱き込まれる。

「じゃあさ、一緒に入んね?」

ちゅと頭に軽く口づけられた彼はなんだか泣きだしそうな顔をしている。ふるふる震える身体を見て単純に銀髪を羨ましく思った。あんな可愛い恋人、心底もったいない気がする。しかしここにきてついに長髪は限界を迎えたらしい、ガタリと立ち上がった。おい、面倒臭いことするなよ。

「銀時!たまには俺と風呂に入らんか!共に背中を流し合い、この国の行く末を語ろうではないかっ!」

声高に提案した男にくるりと当人たちが向きをかえるがその表情はあまり芳しくない。とくに先ほどまでキラキラと乙女全開で惚けていた男の顔など半眼でこちらを睨み付けている。こいつのこういうところも可愛いんだよなァ。

「無理。俺今日は土方とイチャイチャするって決めてるから」

少し考えてからそう返した銀髪を見てまたしてもうっとりする男と喀血して今にも息絶え絶えの男を見て今日も平和だったと手にした湯呑みを飲み干した。それからじゃー風呂入りに行こうぜばっまだ良いなんて言ってねぇだろ!まーまーと仲良く居間を後にした二人を見送ってから、ちらりとペットに縋り付く男を眺める。

「あぁエリザベス、俺を慰めてくれぇっ…!」

いつもの三文芝居がはじまったところで椅子から立ち上がり主をなくしたソファに向かった。チャンネルを変えながら何か面白い番組はないかと探していると後方からハアハア言いながら「せめてお前の胸で死にたい…」と聞こえた。
おいおいこりゃオバQがレイかよ。俺に言わせりゃお前らふたり、ハート様の部下あたりで良いと思うんだが。とにもかくにも何事もなく一日が終えられたことで安堵のため息を吐いた。


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ユダ様のタグを果たして何人が知っているかが微妙←
20091102

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あきゅろす。
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