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愛ってやつは


「なんだよ今日は化けモンも連れかよ」

いつものように居間に入れば目に入った白い生物に苦々しく吐き出せば、長髪は真っ赤になって反論した。

「化け物ではないと何度言ったらわかるのだ高杉!この愛くるしい瞳を見てよくそのような暴言をはけるものだな!」

テーブルを叩きながら始まったいつもの止まることのない賛辞にうんざりしながら部屋を見回す。玄関に靴はなかったが、やはり、

「土方はいねぇのか」
「………なぜヤツの名が出る」

当分やむことはないと思われたペット称賛は土方の名にぴたりと止んだ。相変わらずねちっこい。

「定時も過ぎたろ、何してんだあいつ」
「おい高杉、だからなぜヤツの名が出るのかと聞いている」

こいつに構うと一々疲れるのは幼少のころから知っている(大方、銀時が迎えに行ったのだろう)。だがこいつが人一倍ねちっこくてうざったいことは嫌というほど知っている(おそらくどこかで一杯引っかけて来るはずだ)。とすれば当分は帰って来ないか。めんどくさいが納得するまでしつこいコイツに構ってやることにしよう適当に。さてどれぐらい時間潰しになるか。

「お前も大概だな。銀時のお気に入りをいい加減認めてやれよ」
「認めぬ!なぜ銀時はあのような男にうつつを抜かしておるのだ!」

ぶんぶん長髪を振り回しながら嘆く男が思いの他面白かったのでしばらくこのまま眺めていようと思う。

「そもそも世の中には麗しい女子など山のようにおるというのに!なぜ!男を選ぶ!よりにもよってあの真撰組などと!」
「まー好みだからな。それはテメェがどうのいう話じゃねぇよ」

くあぁと欠伸をしながら目の前に優雅に腰掛ける白い化け物をまじまじと見た。…なんか黄ばんでねぇ?

「幕府の狗と懇ろになるなど……いや、百歩譲ってそれは置いておくがなぜそれを利用できない!あれほどの男を手なずけてしまえば幕府など、」
「待て。それ以上は禁句だ」

続く言葉を察して割り入った。この話題は常にタブーとされているしこれが原因で屋敷をひとつダメにしたのはまだ記憶に新しい。

「銀時が黙っちゃいねーぞ」

あいつはもう俺らとは違うんだからなと続くはずだった言葉は悔しそうに言葉を詰まらせた男を見てやめた。わかってはいるらしい。話題を変えてやるかとため息をつく。

「それになんだかんだ言ってもテメェも土方抱いてんだろォが」
「穴があったら入りたい年頃だ」
「あぁそう」

続いた言葉に選択を間違ったなと後悔したがもう遅い。馬鹿の勢いは止まらなかった。

「あぁエリザベス!お前に穴があったら俺はなんの躊躇いもなくお前を嫁に迎えてやるというのに!」

嘆く長髪に心底気持ち悪いと鳥肌が立てば白い固まりも若干引いたようだった。穴があればって。穴がなくてもそれぐらい愛してやれよ。器量のない男だ。しかし言ったところでこの男、頭は中二で止まっているので身体でのコミュニケーションが成り立たねばあーだこーだと返されそうだ(以前そう返された)
じゃあお前、その愛しのエリザベスの下、そのぴらぴらめくって見ろよ。お前が焦がれた穴があんぜと喉まで出かかったが我慢した。なんだか面倒臭いことになりそうで。

それからあぁ!あぁ!と一人舞っている男を見て土方が来るまで部屋に篭っていようと立ち上がれば、なんだか白に置いて行くなと視線を感じたがやっぱり無視した。


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二人きりになりたくない男、桂。
20091029

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