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この恋の行方


こんなに切ない愛の告白を、俺は知らない。


男はゆっくりと歩み寄った。そのたおやかな白い手にそっと触れ、存在を確かめるように何度も何度もさする。愛おしげに手の先をなぞれば、やがて両の掌で包みこんで静かに口づけた。触れ合った部分から己の熱情を伝えようとしているのだろうか、男の仕草は至って真摯で丁寧だ。その熱っぽい視線は、絶えず目の前でおだやかに座るその人に注がれている。彼は何も言わない。ただやさしく、やわらかく、熱を伝える男を眺めているのだ。

はあ、と、男は息を漏らした。熱い吐息だった。そのまま腕をすべらせて向かいに座る彼の腰を抱いた。縋るようだった。男は彼のやわらかい膝に顔を埋め、まるで懇願するように傅(かしず)いている。さらさらと髪が揺れた。長い束がはらりと肩から滑り落ちれば、男はゆるりと顔をあげた。まあるいびいどろのような彼の澄んだ瞳に映る自分を眺めたあと、苦しげに息を吐き出した。

「綺麗だ」

熱に浮かされた瞳は決して正面の彼から離れることはない。恋をしている男の目だった。焦がれる男の目だった。震える唇は溢れんばかりの慕情を表現しきれずにただただわななく。絶大なる恋情は到底言葉などでは現すことができないのだ。

「お前への愛を語るに足る言葉を俺は知らないのだ……ふがいない俺を許してくれ」

立ち上がり、とうとう男はその白い身体を抱き締めた。胸許に丸い頭を抱き寄せ愛おしそうに頬を擦り寄せている。角度を変えて何度も繰り返す抱擁に、それでも当人は満足しそうになかった。


「愛しているんだ、エリザベスっ…!」
『桂さん、ちょ、苦しいッス』


隙間なく密着した二人は当分離れそうになかった。


テーブルを囲んで眺めている俺、土方、銀時。かれこれ10分は裕に経過している。

「いつまでやらせんだァ?」
「面白いからもーちょい見とく」

熱い抱擁を眺めながら、俺は煎餅の袋に手をかけた。この恋の行方は、誰も知らない。


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っていうか知りたくない←
20091215

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