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まどろみを貴方と


ゆるり目を開いてふるりと身震い。空気の冷たさに思わず鼻先まで布団を被った。重い瞼をなんとか留めてうろうろと視線をさ迷わせれば、隣の枕元、土方の目覚まし時計が目に入る。時刻は午前4時過ぎ。辺りはまだまだ薄暗く静まり返っている。ごろりと寝返りをうって内心舌打ちをした。起きるには些か早い時間帯だった。

(…寒ぃ……)

ここ数日、朝方は得に冷え込むようになった。鼻を掠めるツンとした空気に身体を丸める。覚醒しきらぬ頭でぼんやりと天井を眺め、それから周りの寝息に耳を傾けた。穏やかに規則正しく聞こえるそれらに当分まだ誰も起きやしないだろうと見当をつけて、自分ももう一眠りしようと横を向いた(誰かが部屋を暖めるまで布団の中で待っている魂胆だ)。するところりと隣の黒髪が反転したか思えば目が合った。

「…おはよ」

こちらもまだ多少ぼんやりしながら、それでもしっかり音に出して挨拶された。いつもはぴしりと隙のない顔も今はゆるくずいぶんとあまい。

「はよ。…早いな、あんた」
「あんたもな」

土方は笑う。その目許があまりにもやわらかく弧を描いているので、これはまだ相当眠いなと薄く笑った。もそりと肩口まである布団が動き、ついで時計を確認した彼はふあっと欠伸を一つ。長い睫毛が幾度か瞬いて、それでもまだぼうっとしている。

「今日早いのか」
「いや、通常」

ぱふりと枕に突っ伏してちらりと視線を寄越した。

「寒ぃから、目、覚めちまった」

悪戯をした悪童のように響いたそれ細められた目になんだか嬉しくなって、掛け布団をめくり上げてこちら側に引き寄せた。自分より幾らか上背があるのに土方の身体は線が細いため割と簡単に引き込むことが出来た(半分眠った頭では抵抗もできまい)。

「いっ、て!」

がしりと抱き込んで首筋に顔を埋める。悪いと笑えばふざけんなと返ってきた。拘束を解こうと手足を動かしはじめたのでいい加減起きたかと頭の片隅で考える。

「寒ィんだろ、あったまろうぜ」
「一人でやれっ」

周りに気を使って小声で話す様にこれ幸と首筋にかぷりと歯を立てた。もちろん断りもなしに跡を付ければ銀時がうるさいので緩くあま噛んだだけだが。ぺろりと舐めあげれば抵抗はぴたりと止んで大人しくなる。見ればじとりと睨み付けてきたので、もう一度悪いと笑って手足を緩めた。

「あとすこし、寝るからよ」
「このままか?」
「別に何もしやしねぇよ」

くしゃりと頭を撫でてやってご機嫌伺いだ。首許に擦り寄れば彼のあまく清楚な匂いにふわり包まれる。

「すこしだけだぞ、朝飯の支度するからな」

なんだかんだ文句を言いながらも(本人が聞いたら否定するだろうが)優しいこの男に許されたことでこの上なく気分が良くなる。にやり口角があがっているのにあんたは気付かないだろう。

「だし巻き食いてぇ」
「わかった」
「あれだ、ヅラのやつは辛子かなんか入れとけ」
「わかった」

二人笑って、それから目を閉じた。温かなぬくもりに思考がとけゆくようだ。土方が腕の中から抜け出すまでこの心地良い熱を享受しよう。やさしい匂いに包まれながら、思った。


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この人らはみんなで並んで寝てるんですよ。
20091208

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あきゅろす。
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