腕枕……だと……?
「静雄、静雄ー。寝よう!」
「おう」
ちょっと待て、と言いながら、静雄はどこかへ行ってしまう。
……全く、俺の準備は万端で既に終わっているというのに、静雄はどこに行くんだ。
――久しぶりに見たスウェット姿にも、ときめきを覚える。
「待たせたな。じゃ、寝るか」
「? 何やってたんだ、静雄」
「明日の用意だよ」
「明日の……?」
明日は何かあっただろうか、と首を捻って考えてみても、静雄も俺も休みだという事しか分からない。
しかし静雄はあまり深く説明する気はないようなので、俺もそれ以上は突っ込まない。
……何しろ、今機嫌が悪くなられると、非常に困るのだ。
「……まぁいいか」
俺はわざとらしくそう呟くと、静雄の後を追って寝室に向かった。
寝室、といっても、それ程広くはなく。
俺が頻繁に泊まるようになったので、買い替えざるを得なくなったセミダブルのベッドが鎮座している。
――実際、男2人には、セミダブルでさえ若干狭いんだけどな。
(そんな事を言えば、お前はいつも俺にくっついてくるんだからいいだろと、静雄に言われるだろうと思うんだけど。)
「静雄ー。腕枕ぁ」
「ん」
静雄の機嫌がいい時にしかやってくれない、非常に貴重なこの体勢。
どうせ頭は枕に載せてるし、腕は大して痺れないからいいだろと俺は思うのだが、こんな事を言ってやめられては困る。
口は災いのもと、だったら俺はお口にチャック。
差し出された静雄の腕の上に首の辺りを載せると、自然に笑みが零れる。
「……? どうした?」
「ふふ、別に、何でもなーい」
くすくすと笑った。これくらいなら許してくれるだろう。
だって、静雄の腕枕、って……!
幸せすぎるから明日おすそ分けに、狩沢さんにも話そうと思う。
「……幸せだなぁ、って思って」
暗い中でも分かる。静雄が不審そうな顔をしていたのを。
だからぽつりと言ってみた。だって俺は今セカイイチ幸せだ。
「……そうかよ」
俺も、って言わない辺り、照れているんだろう。
そんな静雄が可愛くて、俺は続ける。
「勿論、静雄が居るからだよ? ……静雄が居なかったら、俺、幸せじゃないから」
「……澪士、」
「ん、なに、」
いきなり首の下から腕が引き抜かれ、俺は非常に驚く。
ギシ。
ベッドが軋んだのは静雄が俺を押し倒すように、体勢を変えたからだった。
「静雄……?」
「……あんま可愛い事言うんじゃねぇよ」
折角明日出掛けようと思って、今日はなんもしねぇで寝ようと思ったのによ。
……お前からやってきたんじゃ、仕方ねぇよなぁ?
――俺の表情が青ざめていったのを、彼はご存知だろうか?
「や、やめっ……静雄、俺、でかけた……!」
「お前のせいだろ?」
な、何でそんな格好いいんだよ、静雄、畜生……!
このままだと、流されてしまうではないか。
――今日は腕枕してもらって寝て、明日はいっぱい構ってもらうつもりだったのに。
(でも、まだ機嫌損ねられなくて、よかった……かも?)
そんな事を思う俺も、大概末期なんだろうか。
10-9/4
(う……静雄の馬鹿ぁ……)
(……悪ぃ)
(そんなんで済むと思ってんの!? 俺、今日のお出かけ楽しみにしてたのに!)
(また今度、行こう。絶対)
(……じゃあ、今日は1日、俺に付き合ってくれる?)
(あぁ)
(!)
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腕枕って萌えだよね!
……って話の筈だったorz
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