嫌いなもの(2)
「ひぁ……っ!」
「……面白い声だな」

 実際、静雄にとっては『面白い』どころの話ではなかったのだが、どうやら澪士は本気で必死らしい。
 流石にここで悪ふざけをするのは殺されてしまうだろう。
 しかし澪士の目はテレビにくぎづけだ。

「……そんなに怖いなら、見なきゃいいだろうがよ」
「静雄何か言った!?」
「……いや、別に」

 どうやらこの小さな恋人は、本当に怖いらしい。静雄は苦笑する。
 その肩の震えにも怯える澪士。

「う……おねが、あ、わぁぁぁあっ!?」

 むしろ静雄にとっては、澪士の叫び声が怖い。

「あう……うっ……うっ」

 それでも怖い番組を見たいらしい、本人に聞けば、怖くないと全力で否定するだろうが。
 ――それを証明する為、静雄はわざと澪士を部屋に1人きりにした事がある。
 止めなかったから何だやっぱり怖くないのかと静雄は非常に残念に思ったものだが、なかなか部屋に戻ってこないのを心配して行ってみれば、……気絶していた。
 ソファーの上で倒れていた澪士を見た時は、笑いを通り越して不憫になったというか――申し訳ない気持ちになったものだ。
 勿論翌日、澪士にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

「……お前、何でノミ蟲の所に行かなかったんだ? 新宿に住んでんだからノミ蟲の方が近かっただろ」
「静雄は、俺に、臨也のとこ、っいやぁぁぁあ!」

 ぎゅうっと抱き着かれ、静雄の心臓が跳ね上がる。
 心臓に悪いのは澪士の叫び声でなく、むしろこの行為だと静雄は切実に思った。

「思ってねぇけど……お前帰るんだろ?」
「なに、俺、1人じゃ寝れな――やだぁぁぁぁあ!」

 ――え、つまり、それは、あれか?
 その先を汲み取って聞いた事が仇となったのかもしれない。
 静雄は自分の鼓動が聞かれていないかと危惧する、しかしそれよりは澪士の方が五月蝿かった。
 2人の思惑が少しずつすれ違う。

「……泊まってくのか? 澪士」
「……ふぅ……ん? うん、そうだよ。最初から言ってんじゃん! それとも何、俺に死んでほしいの!?」
「いやそういうわけじゃ……」

 死ぬとか大袈裟な、と静雄は思う。

「あーよかった。じゃあ静雄、一緒に風呂入ろうか」
「は!?」
「テレビ終わったしいーじゃん。俺1人じゃ風呂入れないよ?」
「いや、それは分かってるけどよ……」

 しかし澪士を1人にすれば、発狂しかねない。ましてや風呂だ、死は免れないだろう。
 静雄は困惑しながらもしかしこんな風に誘ってくれる事は滅多にないので、結局は逆らわずそのまま手を引かれていた。






















10-8/23
(じゃあ、お休み澪士)
(ちょ、ちょっと待て静雄、別々の部屋で寝る気か?)
(……怖ぇのか)
(うっ……)
(……分かったよ、一緒に寝てやるよ)
(!)

(……素直になったな、こいつも)

2人は付き合ってないって設定なのかな←どっちだよ
シズちゃんが臨也の話振ってるからね

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あきゅろす。
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