サヨナラ青春
「あ、静雄だ」
「てめ、澪士!」

 大きな声で叫ばれた。まぁそれも当然か。
 2、3日前、ふらりと姿を消した俺を心配してくれていたのなら。

「久しぶりだね」

 静雄は手にしていたごみ箱を思いきり投げ、その後俺の方にやってくる。
 ……あぁ、やっぱ静雄の喧嘩は綺麗だな、本人はあまり好きじゃないらしいけど俺は見入る。
 それはもう、興奮するくらいに。

「久しぶり、じゃねぇだろ、手前今までどこ行ってたんだ!」
「うん、静雄怒ると思った、」

 悲しくない、そう、悲しくなんてない。
 むしろ俺を心配して怒ってくれてるのだ、俺は嬉しい。

「臨也のとこだよ、って言ったら?」

 静雄から一瞬、全ての怒りと表情が消えた。まぁそれもそうか。
 俺が数日居なくて、しかもその行き先が臨也の家なら、されている事はもう予想が付いているのだろう。

「……しずお?」

 ゆっくりと近付かれ、服に手を掛けられた為俺は慌てて制止する。

「だ、駄目だよ静雄、ここは公共の場なんだから!」
「じゃあ俺ん家行くぞ」

 あああ俵抱きにされた。つまり肩に担がれたって事だ。
 嫌じゃない、誤解するな、決して嫌ではないんだが、だって静雄の後ろ姿が見れるんだもーん!
 まぁ確かに静雄の家は目と鼻の先だけど? 俺もこの家目指して歩いてたんだけど?
 ――晒されるのは姫抱きより辛いぞ、これ。

「……あのね、静雄、臨也がね、」
「あぁ」
「また明日、迎えに来るって」

 こういう時の静雄ほど、頼れる人は居ない。
 あぁ素敵だ、だから俺は、必ず静雄の許に戻ってくる。

「でね、でね、臨也がね、」
「あぁ」
「……シズちゃんに癒され終わったら、また壊してあげるから、だって」

 臨也に貰ったコートを抱きしめた。ロングで本当によかった。
 俺はこの下に何も着ていない。

「俺、俺、」
「……澪士、」

 静雄はきっと自分を責めるだろう。でも悪いのは俺だ。
 俺が、いつも臨也に捕まってしまうから。

「ごめん、ごめんね……静雄……」

 今だけ泣かせて、と言うが早いか、俺の瞳からは涙が落ちてきた。
 ああやっぱり俵抱きでよかった、正面って恥ずかしすぎるだろ、俺。もう20超えた男なのに。
 泣きながら静雄の服を掴んだ。もう、思い出したくない。
















10-8/17
(……俺、もう、十分ぼろぼろだから)
(だから優しくしないで、静雄)

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!