疑いの果てに
「……なぁ澪士、お前って臨也と付き合ってるのか?」
「んなぁっ!?」

 静雄の言葉に、澪士は飲んでいたリンゴジュースを一気に吹き出す。

「げほ、げほっ……し、静雄の馬鹿! 何で俺があいつと……げほっ!」
「お、おい、大丈夫か?」

 涙目になりながらむせる澪士の背中をさする静雄。

「あんな奴と付き合う訳ないだろ! 俺静雄の方がよっぽど好きだし!」
「……それは、褒められてんのか告白されてんのか?」
「えっ!?」

 その比較の対象すら、静雄にとっては不機嫌の元であるのだが。
 多分澪士は無自覚なのであろう。彼は純粋だから。
 静雄は利己的に解釈した自分を恥じる。

「ま、まぁ、静雄は嫌いじゃないけど……」
「なっ!?」

 寧ろそっちの方が問題である。

「だ、大体! いきなりそんな事聞くなよな! 俺達って男同士だし、臨也だって男だろ! 同性なんだから、そんな事するわけ――」
「ない、って決まってるわけじゃねぇ」
「は……?」

 ぐい、と引かれ、ゆっくりと。
 屋上を覆う、硬いコンクリートにたたき付けられなかったのが幸いか。
 片手を引かれ、背に手を添えられて澪士はゆっくりと横たえられる。

「え……しず……?」
「なぁ、俺の事、好きなのか?」

 澪士の心臓がびくりと跳ねた。同時に体温も急上昇。
 至近距離で静雄に低い声で囁かれ……変な気分にならない人など、存在するのだろうか。
 居るのだとしたら会ってみたい、と澪士は喉を鳴らした。

「……好き、だよ」

 誰かのものになるくらいなら、一番つよい人のものになろう。
 そう考えて、平和島静雄の背中をずっと見ていた時期もあった。
 ……しかし、今その告白を受け入れた澪士には、そんな気持ちはないと断言できる。

「……よか、った……」
「……静雄も俺の事、好きだった?」
「あぁ、勿論」

 入学式の日に一目惚れした、と肩に顔をうずめ言われると、何だか凄く幸せな気がしてくる澪士。
 そういえば俺もそうだった、と懐古は懐かしき記憶を辿る。














10-8/15
(じゃあ2人が付き合ったのは俺のお陰だね)
(んなっ!?)
(臨也……ッ、てめぇ、いつからそこに!?)
(最初から)

(……てか、俺の方が先に居たんだけどね)

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あきゅろす。
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