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過去拍手文





テイラー邸の一室から、黒い煙と焦臭い臭いが立ち込めていた。


「……?」


剣の稽古を終えて自宅に帰ってきたルシアンは、いつもなら考えられない状況にいぶかしんで、そっと窓から中の様子を窺う。





「あまりお気を落とさないで下さいまし。
誰でも最初は上手くいかないものなんですから」

「それでも成功させたかったのよ!
何回も練習してるのに……これじゃ間に合いっこないわ…」

「お嬢様、料理は形ではありません。食べる人に喜んでもらおうという気持ちが料理をおいしくするのですよ!」


目線をテーブルの上に落とすと、黒と焦茶のマーブル色の何かが置いてある。


「………あいつの誕生日なんだし、ちょっとびっくりさせてやろうと思ったのに…」



──ああ、ライさんの誕生日だもんね。


覗いていたルシアンは納得した。




確かにあれを貰ってしまったらびっくりするのは間違いないな、とも思ったけれども、それは決して口に出したりはしない。




……とりあえず、今日中に姉さんの料理の腕が上がりますように。


そんなことを願いながら、戦闘時以上に音を立てないように気を遣ってルシアンは窓から離れた。



───ライさん頑張って!



でも決して味見をしようとはしないルシアンだった。





あきゅろす。
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