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弟俺
beloved(日+一)

例の如く投間の家に遊びに行ったら、珍しく投間兄の姿があった。

「あれっ日向さんだ!久しぶりー!」
「久しぶり、投間」

玄関に知らない靴があったからもしかしてと思ってー!と元気いっぱいに話ながら近付いてくる。
ちなみに場所は投間弟、つまり世史の部屋で、そんな行為がお咎めもなく罷り通っているのはこの部屋の主人が飲み物を取りに階下に行っているからに他ならない。

「あっそういえばさー!俺、日向さんに聞きたいことあったんだった!」

世史が来る前に聞いちゃおーっと、とローテーブルを挟んで顔を近付ける一矢に、多少後退しながら日向は何?と首を傾げた。

「日向さん、よく遊びに来てるみたいだけど、2人で一体何話してんの!?ちゃんと恋人同士的なあまい雰囲気とかなってんの!?」
「うわっわー!何言い出すんだ投間!」

一気に捲し立てられた言葉に、日向の顔が一瞬で赤く染まる。

その反応に少し満足したのか、一矢は少し距離を取ってから唇を尖らせて呟いた。

「だって、甘える世史なんて想像出来ないんだもん」

その言葉に僅かに驚いたような表情で顔を上げた日向に、一矢は憮然とした態度で何、とだけ返す。

「や…なんでも…」
「なんでもないって割には顔ニヤけてるけど」

えっ、と思わず顔を押さえてから、日向は確かに自分の顔が緩んでいる事を自覚した。

だって、

「おいお前何やってんだ」
「わっ世史!なんだよぅ!邪魔者はすぐに退散するって!」

丁度飲み物を持った世史が現れて、一矢は一目散に部屋を後にした。

「……なんだよ」
「や、なんでも」
「ないって割には顔がニヤけてるけどな」

先程と同じような会話をして、日向は更に表情を綻ばせた。

だって。


世史が大好きで、一番理解している筈の一矢が言ったから。

世史の甘える姿が想像出来ないって。

だから。








誰も知らない君を知っていることがただ嬉しいだけ





20120712

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