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2と3
訪問(カイマナ+バレドロ)

「えぇ?おめでた?」

アルヴァーナ唯一の牧場のある家に、その声は響いた。

牧場の家の玄関で対峙するのは、この家の家主カイルとそろそろお腹の張りも目立ってきた妻・マナと、先日鍛冶屋『スチーム』で色々やらかしたバレットとその妻ドロシーだ。

「そうなんだ。それで、その報告。お前たちには結婚の時に色々と世話になったからな」
「えぇ?そんなの全然いいよ」
「そうよ、気にしないで。それよりも、お祝い事が立て続けに起きるわね」

バレットの言葉に、びっくりしたように返すカイルと、苦笑いしながら手を振るマナ。

「でも、私たちの次に子供ができるのがバレットたちなんて、ちょっとびっくりだわ」

奥手な二人なのにね、と、ころころと幸せそうに笑う。花のような声も、可愛らしい容姿も、変わらずそこにあるマナ。

「……、そうね…」

それを、結婚してからも式以来一度も目にしない瞳で、ドロシーが笑った。

そのドロシーの笑みの意味を、バレットのみが知っていた。








カイルとマナの家からの帰り道。
バレットとドロシーは、そっと手を繋いで歩いていた。

「……ドロシー?…」

バレットの、ドロシーを気遣う気配に、ぎゅう、と繋ぐ手の力が強まる。

「…マナが、…同じ時期に…子供ができたのは、偶然ね、…て、言う度……」
「うん」

ゆっくり、言葉を紡ぐドロシーを、バレットは根気良く待つ。

「…偶然じゃないのよ、……って…言いそうに…なった、の……」
「…うん」

歩幅が小さくなり、やがて二人の足が完全に止まった時。
ドロシーの見えない瞳から、ぽろりと涙が落ちた。

偶然じゃないのよ。
私たちが、示し合わせたの。
カイルさんが好きだから。
カイルさんを、諦めきれないから。
だから
せめて、何から何まで、おそろいに。
示し合わせましょう。

「…でも…」

でも。そう、でも。
そんな、そんな事。
誰に対しても、失礼で。
カイルさんにもマナにもバレットにも、子供にも。
失礼極まりなくて。
…気持ち悪くて。
そんな自分を、知られたくなくて。

「…、……っ」
「ドロシー」

バレットは、涙で詰まって、何も言えないドロシーを抱き寄せた。

「…無理して、言わなくてもいいんだ。」
「…バレ、…ト、」
「俺が分かってるから。俺も同じだから。ドロシーは独りじゃないから…」

ちゅ、と、可愛い音を立てて、バレットはドロシーの額にキスをした。

(…幸せにしてやる。カイルよりも、俺が。マナよりも、お前を。)














だってこれは復讐なんだから。
お前を泣かせた奴等への。
だからドロシー。
きっと、お前よりも、俺の方が汚い。
お前が泣く必要なんか、これっぽっちもないんだよ。





End
20091027



あきゅろす。
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