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はじめの一歩(クロアル?)



(あ)


クロウは背中に視線を感じた。
だが殺意とかの類ではなく、ただの興味の眼差し。


クロウはウォプタルを撫でる手を止めずに背後に声をかけた。

「ちっこい姐さんもこっちに来て、
ウォプタルに触ってみやせんか」

背後の気配がビクリと動く。
何故居るのが分かったのか不思議なのだろう、興味は警戒へと姿を変えた。

クロウは苦笑しながら振り返る。

「ちっこい姐さん」

振り返った先には、アルルゥ。
アルルゥはクロウと目が合うと一目散に何処かへ走って行ってしまった。

「…いきなり声かけたのがまずかったかねぇ」

クロウは溜め息まじりに呟いた。







†はじめの一歩†









――その日の、夕食。

クロウの隣は、オボロ、反対側にはアルルゥ。

最早定位置となったこの並び。

ふとクロウがアルルゥの方を見ると、
アルルゥは一点だけをじぃっ、と見つめていた。

その視線の先を追えば、急須。

どうやらお茶が飲みたいが、手が届かなくて思案しているようだった。

クロウはひょいと急須を取るとアルルゥの目の前に置いた。

それにアルルゥははっとしてクロウを見上げる。

目があったので、クロウは親指を立てて笑いかけてみるが――

ふいっ

「あら…」

視線を逸らされてしまった。
しかしアルルゥは急須はしっかりと取った。

(こりゃ本格的に嫌われてるかもしんねぇなぁ)




夕食が終わり、みんながチラホラと帰って行くなか、クロウもその一人だった。

「はぁ〜食った食った〜っと
どわあぁっ!?」

油断しまくっていたクロウは、
いきなりマントを引っ張られ、危うく前のめりに転びそうになってしまった。

しかし片足を前に出してなんとか踏ん張る。

「ひゅ〜、危ねぇなぁ、一体誰――」

後ろを振り返ってクロウの言葉が一瞬止まる。

しかしすぐに次の言葉を発した。

「…ちっこい、姐さん…」

アルルゥはクロウのマントをぎゅう、っと握ったまま何も話さない。

クロウは困ったように眉間に皺を寄せた。

「…星」
「へ?」

しかしすぐにアルルゥが小声で何か言葉を発した。

「…きれい」
「へ?……ああ、確かに」

クロウは空を仰ぎ見た。確かに今は雲一つなく星がとても綺麗に見える。

そしてクロウが顔を空からアルルゥに戻すが――

アルルゥの姿はそこにはなく、辺りにも見当たらない。

仕方なくクロウはもう一度空を仰ぎ見た。

(…綺麗なもんを、俺に見せようと?)

クロウは空を見ながら考えた。

口元には、笑み。

「じゃあ今度はとっときの花畑にでも
ちっこい姐さんをお連れしてみやすかねぇ」


そして正面を見ると、歩き始めた。




先程よりは、足取りも軽く。






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あきゅろす。
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