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嫌な夢。流れる汗。
蒸し暑い夏の夜は、やっぱり眠れない。



古典の授業だった気がする。
教科担任の教師はいつも中心から逸れた話をしていくせいで、授業とは関係ないことばかり頭に残っている。

かつて昔の人々は『夢に好きな人が出てきたときは、その相手も自分を想ってくれている証拠』だと信じて疑わなかったらしい。
なんて幸せで、おかしなジンクス。そんなの自己満足に過ぎないでしょう。

第一、現代に生きるあたしには、こんなの慰めにもならない。
だって夢の中の彼は、自分とは違う誰かと両思いになって笑っているから――。



「ねえ、馨」
「何?」
「幸せ?」
「うん、幸せだよ」
「…そう。よかったね」
「ありがとう」


嬉しそうに笑う馨とは対称的に、上手く笑えないあたしがいる。どうして心から祝福できないんだろう。

そんなの決まってる、あたしが馨のことを好きだから。



夢の中だけじゃない、馨の笑顔はいつだってそうだ。
優しいけれど、冷たい。あたしを、見ていない。
どこか別の方向に向けられている気がして、悲しくなる。
きっとあたしの想いが一方通行な証拠。それを無意識に感じ取ってるんだ。



あたしは予知夢なんて信じないし、今日不幸にも遭遇してしまった場面と夢が似ていただなんて、死んでも思いたくない。


だって、夢は夢でしょう?






夢の中でさえ結ばれないあたしの運命が、どうしようもなく悲しい。










あきゅろす。
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