[携帯モード] [URL送信]





じっとあたしを見つめる馨の瞳。
どうしたの、と聞く余裕さえない。この視線から逃れたくても、手首を掴まれて、まるで今にもキスされそうな距離だから、なんとなくそれができない。あたしの体内を占める7割の水が沸点に達する前に、早く視線をそらしてほしいけど、馨の口から出たのは意外な言葉。

「どうして僕を好きになったの?」

そんなこと改めて聞かれると少し戸惑う。理由もなく好きになったわけじゃないけど、ねえ、どうしてかな、言葉が出てこないのは。

「具体的に答えてよ」

命令口調で言われると、なんだか現代文の問題でも解かされてるみたい。この状況にそぐわないことを思いながら、楽しそうに口端を上げる馨を見つめる。

途端に、あたしの手首を掴む馨の手の力がぐっと増した。痛いくらいに、あたしを離さない。

「言えないの?」
「そうじゃないけど」
「僕なら今すぐにでも言えるんだけどな」

ずるい人。
あたしは、馨のこうゆうところが嫌い。何もかもわかっているくせに、何もかも見透かしているくせに、こうやってあたしを困らせる。
そして楽しんでるのね。

「ずるい人」
「どうゆう意味?」
「あたしは、馨のこうゆうところが嫌い」
「嘘だネ」
「嘘じゃない」

そう、事実なの。
馨は全部わかってるんでしょう?あたしが何を言いたいか,何を思っているか。
それなのに、とぼけたフリをするところが嫌いって言ってるの。


「素直になったら?」


だけどね、





「黙って」

もう何も言えないように、あたしがキスしてやるんだから。









あきゅろす。
無料HPエムペ!