再開の初めまして
消える。
人が消える。
大事な友達が、今まで一緒にいた人が居なくなる。
それは恐ろしいことで、何より悲しいこと。
「一人で行け」
そう言う彼の言葉に、ワタルは深く考える前に嫌だという言葉が出た。
向かうなら二人で。
帰るなら一緒に。
「一緒に帰ろう!」
その言葉は、聞き入れてもらえなっかたけれど。
再開の初めまして
亘は一心不乱に学校へと向かう。
いつも通る細い道に足を踏み入れて、ただ、あの大事な友人のことを考えた。
まさか本当に彼はいないのだろうか。
克美は訝しそうに亘を見ているし、嘘もついているようには思えない。
廃ビルで見かけたのも、転校してきたことも全てなかったことだったのだろうか。
いいや、とそんな考えを振り払うかのように亘は首を振る。
有り得ない。
少なくともヴィジョンでの出来事は自分の身に起こった。
まだはっきり覚えていて、夢だとも思えない。
「そんなわけ、ないよ」
一瞬横切った恐ろしい考えに、亘は呻くようにつぶやいた。
するとそれを聞いていた克美はそっと彼の肩を叩く。
「どうしたんだよ、亘」
「……ねぇ、かっちゃん。本当に芦川美鶴ってわからない?」
亘のひどく不安そうな表情に克美ももう一度考えてみるのだが、それでも彼の頭の中には該当する人物は浮かばない。
答えの代わりに肩をすくめて見せる。
亘の歩くスピードが上がった。
まるで、学校へ行けば全てがわかるとでもいうように。
鳴るチャイムと靴箱へと走りこむ二人。
あれから亘は始終無言で、克美もそのようすに何も言わずついていく。
それはいつもの彼雰囲気とはかけ離れていて、克美は目の前の友人を眺める。
昨日と変わらないはずなのに。
「あっ、亘、前!」
亘は前を良く見ていなかったのだろうか。
克美がそう注意した時には既に遅かった。
下駄箱の陰から勢い良く走り出てきた小さな影と、彼は接触する。
「わっご、ごめんね……」
亘は少し身を屈めて、ぶつかった少女を気遣うように謝った。
「……あれ?」
ふと、その少女がどこかで見覚えのある人物だと気がついた。
しかし名前が出てこない。
確かに知っているのにわからないという不思議な感覚。
「きみは、」
「アヤ、待ってろって言っただろ」
聞き覚えの、ある声が。
亘がゆっくりと下駄箱へ視線を向ける。
するとそこには、靴を履いて、ゆっくり立ち上がる美鶴がいて。
「美鶴……」
「なんて顔してんだよ、亘」
手の中で消えたはずの彼は、今確かに、目の前で笑っている。
亘は目の前の光景が歪んだような気がした。
本当に、死んでしまったんだと思ったんだ、それは言葉にならずに彼の喉の奥で消える。
泣くわけにはいかないといっそう強く拳を握り締めた。
「あ、当たり前、だろ。普通こうなるって」
出る声が震えていた。
今にも泣き出しそうで、美鶴はそれにくすりと笑う。
「変わらないな、お人好し」
「何だよそれ」
アヤと克美は理解ができていないようだった。
彼らが分かる限り初めて会ったはずの二人は、自己紹介すらしていないのにも関わらず名前を呼び合っている。
しかも軽い冗談も言えるくらい仲がいいらしい。
「何だよ亘。お前、転校生と知り合いだったのか?」
「……あ、う」
「いや、違うな」
克美の疑問に亘が答えようとしたのを別の声が遮った。
遮られた亘は何を言うんだという目で美鶴を見るが、彼は軽く肩を竦めただけ。
「知り合いじゃないさ、一応友達だ。……初めましてのね」
fin...
素敵な再開。
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