拘束する指輪


薄い雲の張っている空が黒い雨雲に浸食されて行く様は、見ていてなかなか良いものだと思う。
彼は全てを包み込むというけれど、僕がこうやって覆ってしまったらどうするつもりなのだろう。
誰にも見せないように、誰も見ることが出来ないように。

それともそれより先に、家庭教師と呼ばれている護衛役が、それを阻止するのだろうか。



拘束する指輪




そうやってとりとめもないことを考えながら、雲雀はくすりと笑った。
こうやって獲物を追い詰める瞬間を想像するのは、彼をとても楽しい気分にする。

現に雲雀は、上機嫌で校庭を眺めていた。
下校の際の「群れている」集団を見ても苛々した様子はない。

首に掛けられている、チェーンに通された指輪。
まるで何かに束縛されるようで初めは嫌だったが、これが沢田綱吉に関わるものだと分かれば、受け入れるのに抵抗はなかった。

ディーノは雲雀が指輪を受け入れたことに安心したようだ。
けれどそれは、多分彼が沢田綱吉の部下になることを許容したのだと勘違いしたからだろう。
それは、とても大きな勘違いだ。
雲雀は、綱吉の部下になるつもりなどなかった。

命令されたって関係ない。
彼は誰よりも自由で、そして。


「よく来たね、綱吉。この指輪はそんなに大事なものなのかい?」


獲物を確実に手に入れるためには、手段を選ばないのである。



fin...



放課後の応接室にて

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