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愛する君にこの唄を(スザルル)


R2後
英雄の独白
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空を見上げれば君がいる。
この世のすべては君に包み込まれている。
あぁ。
なんて憎らしいんだこの世界は。
世界など、君に比べたらちっぽけなものだと気付かされたのはいつだろう。
でも、それが君の願いなら、僕は叶えるしかなくなるんだよ。


「何を考えてたの?」

空を見上げる彼にそう尋ねた。

「お前のことだ、って言ったら喜ぶか?」

そう言って不適に笑う顔。
彼らしい答えに思わず少年は笑う。
彼もそれにまた満足気に笑った。

「そうだね、嬉しいよ」

さらさらした黒髪を優しく撫でる。
すると彼は目を瞑って気持ち良さそうにそれを受け入れた。

「あのね、夢を見たんだ」
「どんな?」

少年は黒髪をなでながら口を開いた。

「僕と君はね、敵同士なんだ。それで戦って憎みあうんだ。で、最終的には、皇帝と騎士になるだよ。もちろん君が皇帝、僕が騎士。僕たちは優しい世界の為に世界を征服するんだ。すごいよね。でも君は優しい世界を創るために、世界を壊すんだ。僕はそのために、君をね、君をね、この手で、この手で殺すんだ」

少年はそう言って、彼の胸に顔を押し当てる。
そんな、少し弱った少年を見て彼は優しく頭をなでた。

「ふっ…馬鹿だな、俺がお前の敵になるはずないだろ」
「うん」
「それにまず第一に、お前は俺の敵にならないし、なれない」

自信満々にそう答える彼。
だが。

「泣いてるの?」

つぅっと頬に流れる涙。
何かを押し殺したような表情。自分がこんな顔をさせたのか。

「泣かないで」

彼には泣いてほしくない。
笑っていてほしい。

「      」

自分にすがり付くようにして涙を流す彼はいつもに増して儚げだった。
今にも腕の中から消えそうで。
少年は力一杯彼を抱き締めた。
この時“俺”は、無性に世界と自分が憎くなった。


ふと空を見上げ両手を伸ばす。
そして伸ばした腕で何かを掴む。

「あぁ、今日もいい天気だ」

風に吹かれたマントが静かに靡く。
足元では彼の残した仮面がひとつ。
一人の英雄は腕をすっと下ろすと、目の前の小さな墓石を抱き締めた。

「今日も君の愛した世界は平和だよ」

冷たいはずの墓石は妙に温かかった。

「君の願いは全部叶えてあげるから」

願い。
彼はそう言った。
だから“英雄”は生き延びている。
本当は今すぐにでも行きたい。
あの小さくて細い体を抱き締めたい。
この腕に抱き締めて離したくない。
だが彼はいない。
その事実がこの“英雄”をさらに苦しめている。
愛しくて、愛しくて堪らないのに。

「きみを…愛、してる」
『俺もだ』
「っ……」

わかってる、彼はいない。
この世界のどこにも。
わかってるんだ。

「愛してる愛してる愛してる、君がっ君が好き、君を愛してる!!」

わかってるから泣くな。
彼がそう言ってるみたいで、胸が締め付けられる。
いきたい。
生きたい。
逝きたい。

「君なんか、だいっ嫌い………大好きっ」

だいきらいなんて嘘。
世界一愛してる。
君さえいれば本当はなにも要らない。
もちろん世界も。

「うん、君はここにいるんだよね」

再び空に向かい両腕を広げる。

「いつかまた抱き締めた時、君に褒めて貰えるように頑張るから」





「愛してるよ」

“英雄”は名前をひとつ呟いた。




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あきゅろす。
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