「名前?」 どこか遠くから聞こえた自分を呼ぶ声にゆっくりと目を開けた。 視界いっぱいには功一ともう一人。 「母ちゃん!!寝ちゃ駄目じゃん!!」 「ゴメン、ゴメン」 何か懐かしい、そんな夢を見ていた気がする。 功一と初めて出会ったときのことや再会した日のこと。 愛を誓いあった日や、この子を身篭ったとわかった日。 夢の中のあたしは、決してずっと笑顔でいたわけではない。 悩んだり、泣いたり、傷つくこともあった。 でも、そんなあの日々が今のこの、幸せな毎日に繋がっているとしたら全てが愛おしく感じた。 「名前?大丈夫?」 「ん?」 「ちょっと、昔のこと思い出してただけ。大丈夫。」 時刻は夜中の2:32 あたし達はアリアケの近くにある丘に来ていた。 今夜見える、獅子座流星群を3人で見に来たのだ。 「俺、名前の呼ぶ『有明君』っての好きだった。」 「何、突然。」 「いや、なんかそういえばあれ、結構好きだったなぁーと思ってさ。」 「今はもう呼ばないからね」 「そうだな。」 「父ちゃん、母ちゃん!!流星、凄いよ!!」 突然聞こえた声に指差している方向を見上げる。 そこには、空いっぱいに流れる流星群があった。 「綺麗、」 「凄いな…。」 なんだか急に、ここに3人でいれること 功一と出会えたことが凄く奇跡に思えて涙が出た。 「母ちゃん、泣いてんの??」 「名前は泣き虫だからなぁー」 神様、あの日からあたしはきっとこの日のために生きてきたのだろう。 この幸せな日々を探すために、辿り着けるように功一と巡りあったんだ。 流星は止まることなく降り続いていた。 |