有明君への告白で見事玉砕してから卒業するまで、有明君とはなんの進展もなく過ぎてしまった。 この高校生活、告白されたこともいくつかあったが、どうしても有明君を忘れることができず、色恋ないまま今日卒業を迎える。 「あっ!」 友達を別れを惜しんでいると、遠くに有明君が歩いているのが見えた。 これで最後、そう思うと自然と足が動いていた。 「みんな、ゴメンね!!」 「ちょっと、名前!!」 友達の静止の言葉も聞かずに走り出した。 至る所で人だかりができていて、あたしはその間を摺り抜けながらあの背中を追いかけた。 「有明君っ!!!」 あたしの呼びかけにゆっくりと有明君は振り向いた。 あの頃よりも少し背が伸びただろうか? 相変わらず、寝癖ついたままだな。とか そんな事ばかり考えてしまっていた。 「名字?」 「そ、卒業おめでとう!!」 必死なあたしの姿に苦笑しながらも、おめでとう、と返してくれた。 「有明君は、進学するの?」 「専門学校だけどね、調理関係のとこ」 「洋食屋さん、だったんだよね…」 「まぁね……」 「あたし、必ずまた会いにいくから!!」 「えっ?」 「有明君が、お父さんの後継ぎになって洋食屋やって、あたし必ず会いに…食べに行くから!!」 何言ってるかなんてわかんない。 だけど、これで有明君とさよならなんてできなかった。 「名字…、」 「突然、こんな事言われても困るよね……。」 「俺、名字と最後に話せてよかった。」 そう言った有明君はあの日みたいに穏やかだった。 「あたしも、有明君のこと……好きになれてよかった。ありがとう。」 「うん。」 なんだか3年分…それ以上のあたしの想いが報われた気がした。 「名前、俺待ってるからさ、また必ず会いにきてよ。」 「っ…必ず、必ず会いに行くっ、!!」 最初で最後だと思ってた。 有明君が呼んだあたしの名前に堪えきれずに涙が溢れた。 |