あれは中学校3年生の夏。 あの時のあたしは、吹奏楽部で厳しい上下関係の中、みんなで必死に全国大会出場という夢を掲げていた。 大会当日。 大きなホールで今までの成果をしっかりと発揮できた大会だった。 しかし、現実は厳しくて初戦敗退。 「終わっちゃった、あたしの夏……」 中学校の裏庭。 人気も少ないのであたしのお気に入りスポットだった。 これで最後にしよう。 自分自身にけじめをつけるべく、楽器をかまえた。 ガサッ 後ろで何者かが動く音が聞こえて、驚いて演奏を止めてしまった。 「あっ、」 あたしの視線の先にうつったのは同じクラスの有明功一君だった。 様子からしてどうやら寝起きらしく、寝癖がついたままだった。 「ごめんなさい!!うるさくしちゃって……」 「べつに、俺が勝手に聴いてただけだし。」 同じクラスとは言ったものの、正直一度も会話を交わしたことはなかった。 (事件のこともあったし……) みんなとはどこか一線を引いて周りを見ていた彼は、クラスのみんなからも違う目で見られていた。 あたしは、とくに避けていたわけでもないが、どのように接していいかわからずにいたのだ。 「名字、だよね?」 「えっ、…うん。」 自分の名前(正確には名字)を知っていてくれたことに驚いた。 「有明君、だよね?」 「そこ、聞くんだ。」 「い、一様……」 どこか大人びた笑みを浮かべた有明君に。感じたことない顔のほてりを感じた。 「大会どうだった?」 「…だめ、だった……」 「……そっか……………」 「もう一回、」 「えっ…?」 「さっきの、聴きたい。 なんかさ、名字の音…落ち着くからさ……」 有明君の言葉に熱が顔に集まるのが自分でもわかった。 「あ、りがとう……」 有明君は笑ってた。 この日、泪を熱に変えた君に恋に落ちた。 |