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笑う鬼と泣きむし
嫌な知らせ



私の傷を見られた後、何だかアニキさんと一緒に居る事が苦しくなった。


幼い頃の傷とはいえ、この傷が出来上がった経緯を思い出すと、やっぱり人が怖くなる。


幸いここ数日は、看板掃除と給仕作業ばかり担当になったので人に関わらないですんだ。
アニキさんとは、会わないように避けてしまっている。



「…やっぱり、苦しいなァ」



息が、詰まる。

これなら実家の方がましだ。私に期待なんかしていない。私を必要としていない。

私が、居ようが居るまいが構わない。




けれど、この船では違う。

私は数に入れられていて、私には仕事があって、誰かが私を気にして話かける。



苦しい、な。



私は、大きな溜め息をついて荷物の影に腰を下ろした。




空には、白いウミネコが飛んでいる。





「……なぁ聞いたか?…の村に…」
「あぁ…」


私は、思わず「嘘っ」と呟いてしまった。
私が潜んでいた荷物の近くで、船員達の話を盗み聞きする。


「毛利の拠点があるんだろう?」
「流石はアニキだよなー!」



彼らの話によると、毛利軍とアニキさんとで覇権争いしている地域の村に、秘密裏に毛利軍の拠点が作られていたそうだ。


問題は、


「(…私の生家じゃないか……)」



確かに、父上は親毛利であったけれど自分の村に軍の拠点を作らせるなんて。

しかも、


「(明日にはそこに攻め入るなんて…)」


冷や汗が止まらない。

どうしよう。
私、此処に居たら。




私も、戦場に?



そうしたら、私は、



父上に刃を向ける事になるの?



嫌っ!!



私は、自分を抱きしめて体を縮こませた。見つからないように。いっそ消えてしまえたら。



「……どうしよう…っ」






「あれ、アサギ?」
「どうしたよ、気分でも悪いか?」


会話していた船員達が、私に気付いた。体調を心配してくれているのはわかっていた。

けれど、



私は小さな悲鳴を上げて逃げ出してしまった。
彼らは驚き、唖然としていたけれど。それにすら気付く余裕はない。



私は、泣きながら荷物倉庫へ駆け込んだのだった。



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あきゅろす。
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